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深い悲しみ 淡々と
切なさが胸にしみた。描かれるのは恋の歓喜や美しさではなく、深い悲しみ。苦しみの中、男と女は出会い、そしてさらに苦しみ、心揺らす―。
舞台の照明監督インス(ペ・ヨンジュン)と、平凡な主婦ソヨン(ソン・イェジン)。二人を結び付けたのは一つの交通事故だ。ソウルを遠く離れた地方都市の病院。それぞれの妻と夫が、同じ事故のため、意識不明で担ぎ込まれていた。
驚く二人を、さらなるショックが襲う。それは配偶者の裏切りという事実。事故は、不倫旅行の最中に起きた。驚き、混乱したまま、インスとソヨンは、事故に巻き込まれ死んだ若者の葬儀に向かい、遺族に怒りをぶつけられる。当人らは黙したまま、生死の境をさまよっている。やりきれなさの中、伴侶に裏切られた男女が、苦悩を共有し、やがて、互いの存在に救いと癒やしを求めてしまう…。
冒頭の事故の設定は劇的で、以降の展開もいくらでも起伏に富んだものにできたに違いない。が、全体の印象はむしろ静かで淡々とさえしている。ホ・ジノ監督は、過剰な感情表現や説明を省き、二人の許されざる愛を描いた。それは「熱さ」「激情」など、韓国映画に日本人が抱くイメージとは対極のものだろう。
静かで、観客の想像力に委ねた「余白」の多い映画だ。だが、本当に深い感情は、むしろ表面には浮かびにくいのではないか。観客は少ないせりふや、主人公らのしぐさ、表情から、思いの濃さを読み取らねばならない。
配偶者への怒りと愛。裏切られた男女自らが、不倫の愛にはまりこむことへの恐れ、戸惑い、罪悪感。誠実すぎる男女ゆえ、その苦悩はより深い。これは人の心の痛みを知る成熟した大人のための恋愛劇なのだ。一時間四十七分。公開中。
(堀井正純)
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