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壮絶な生 漂う無常観
死と隣り合わせの危険な一瞬にのみ、「生」の喜びを実感できる―。実在した主人公ドミノ・ハーヴェイは、そんな過激で複雑な女性だ。父はハリウッドスター。上流家庭に育ち、モデルとして成功しながら、自ら血と暴力にまみれた「賞金稼ぎ」の世界に飛び込んだ。
型破りで壮絶な彼女の生を、ハリウッドの技巧派トニー・スコット監督が、クールな映像で活写、スリリングな犯罪サスペンスに仕立てた。容赦ない暴力描写に圧倒されるが、全編に漂うのは、ある種の「無常観」と「痛み」の感覚である。
賞金稼ぎは、逃亡犯や仮釈放中の犯罪者の身柄を拘束する荒っぽいプロ。女には無縁にみえるその世界に、ドミノは強引に入り込む。空っぽの心を満たすように。「面白そうだから。死ぬのは怖くない」。うそぶく彼女は、銃撃戦にも物おじせず、血が沸騰するような瞬間のスリルを楽しむ。
時系列をパズルのようにばらばらにした凝った編集。軸となるのは、彼女が絡んだ一千万ドル強奪事件だ。ドミノらを撮影するテレビクルー、マフィアや警察などの思惑が交差し、事件は予想外の悲劇的結末へ向かう。ラスト三十分の疾走するような緊張感は圧巻だ。
エキセントリックで美しいドミノの光と影を、若手女優キーラ・ナイトレイが体当たりで表現。仲間のエドを演じるミッキー・ロークらと見事なアンサンブルをみせた。
なぜ、ドミノは危険を愛したのか。幼いころの父の死、身勝手な母、寄宿舎生活…。浮かび上がってくるは、彼女の心の飢えだ。ベトナム戦争帰りのエドをはじめ、周囲の男たちも、過去に傷を持つ。根底には、世界を覆う激しい貧富差など、社会への痛烈な批判精神が横たわる。作品は、魂の孤独を描く、痛切な人間ドラマでもあるのだ。二時間七分。二十二日公開。
(堀井正純)
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