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「仁義の人」が描く人間群像
本作の監督、マキノ雅彦は仁義の人である。
西田敏行や笹野高史らそうそうたるキャストの中で、新人飼育係役として準主役級の扱いを受ける中村靖日を知っている人はどれだけいるだろうか。低予算映画「運命じゃない人」(二〇〇五年)の主演俳優。同作を好きだったマキノが、今回の大作に抜てきしたのだ。
前監督作「次郎長三国志」(〇八年)でも「運命―」の出演者の一人、山中聡を主要キャストとして起用。「ほれ込んだヤツは徹底的に面倒を見る」と言わんばかりの親分肌ぶりに感心せずにはいられない。
幾たびもの閉園の危機を乗り越え、入場者数日本一の記録を打ち立てた北海道・旭山動物園の軌跡を映画化。中村演じる飼育係吉田は、園長(西田)や韮崎(長門裕之)、柳原(岸部一徳)らアクの強い先輩らとともに動物園を立て直す役だ。
俳優としてのキャリアも長いマキノ。「ここは引いた映像を」という撮影スタッフの申し出も「表情の演技をアップで見せたい」と寄せつけず、俳優の心理を知り尽くした演出に徹したという。中村も絶妙な泣き顔の演技を決め、期待に応えた。
だから本作は「動物園の奇跡の復活」というよりは、「飼育係たちの人間ドラマ」として見た方がより楽しめるはずだ。動物園の運営費に市の予算を割くように画策する園長や、客の前で動物の紹介をすることに喜びを見いだす飼育係…。夜の動物園で夢を語り合う俳優たちが輝いて見えるのは、彼らを大切に思うマキノならではの業である。
ところで、三作連続のマキノ映画出演となる兄の長門。数年前、仕事が激減した彼の不遇を救ったのも、誰あろうマキノなのだ。人のいい老飼育係を喜々として演じている姿を見ていると、麗しい兄弟愛を感じて熱いものがこみ上げてきた。
一時間五十二分。七日から神戸国際松竹などで公開。
(黒川裕生) |