ALWAYS 三丁目の夕日 (2005/10/28)

 

貧しくても幸せだった

 真っ赤な夕日が明日へと続く「希望」の象徴と映るのは、きっと幸福なときだ。これは、人々が貧しくとも懸命に働き、日本が元気だった時代の物語。夕映えの美しさ、人情の温かみがじんわりと心に染みる。

 原作は、西岸良平の人気漫画「三丁目の夕日」。「高度成長期」のまっただ中、昭和三十三(一九五八)年の東京が舞台。その年、東京タワーが完成し、フラフープが流行。庶民は「三種の神器」にあこがれ、テレビでは力道山の熱戦が人気を呼んだ。

 軸となるのは、下町の自動車工場「鈴木オート」と駄菓子屋「茶川商店」をめぐるエピソード。血の気が多い自動車整備員・鈴木(堤真一)は、集団就職で上京してきた少女・六子(堀北真希)を受け入れるが、態度が気に食わず、ある日、衝突する。一方、作家志望の青年茶川(吉岡秀隆)は、料理屋の女将ヒロミ(小雪)の頼みで、身寄りのない少年淳之介(須賀健太)を預かることになり、奮闘するが…。

 テーマの一つは「家族」。血のつながらない茶川と淳之介の心の触れ合いや、六子が鈴木オートの人々と家族同然に仲良くなる様子は、予想通りの展開とはいえ、ツボを押さえた演出で心を打つ。人と人が本音でぶつかり合う、下町の人情豊かな人間模様がいい。

 大量消費時代の入り口。人々は、新しい電気製品を文明そのもののように喜んでいた。山崎貴監督は、懐かしき「昭和」の情景を、ノスタルジックに描く一方、「使い捨て」文化をさりげなく批判。まだ人々の心に残っていた戦争の傷跡に触れることも忘れない。

 幸せとはモノではなく、「見えない何か」だったのだ。その象徴が、貧しい茶川が、恋するヒロミへ贈ったプレゼント。それはお金で買えない、「愛する心」そのもの。その贈り物が何だったか。ぜひ劇場で確かめてほしい。二時間十三分。十一月五日公開。

(堀井正純)

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