スラムドッグ$ミリオネア (2009/04/17)

インドの少年 世界を席巻

 学校に行ったこともないスラム育ちの孤児が、インドの人気クイズ番組でなぜか正解を連発。あと一問で番組史上最高額の賞金を手にするところまでたどり着く。「どんなズルをした? さあ白状しろ!」。突然警察に逮捕され拷問を受ける少年。「ズルじゃない。ただ答えを知っていたんだ」。痛みでもうろうとした彼の口から、驚くべき真実が語られ始める―。

 ロンドンの薬物中毒の若者たちを疾走感あふれる演出で活写した「トレインスポッティング」(一九九六年)で称賛を浴びたダニー・ボイル監督が、全編インドロケを敢行。警察の尋問、番組のスタジオ、少年が語るスラム街での過酷な生活、と三つのエピソードを行き来する構成は一分のすきもない。貧困を悲劇的にとらえずエンジン全開で駆け抜ける主人公の幼少期の姿には胸がすくような興奮を覚え、インドの音楽家ラフマーンの楽曲も作風に呼応した躍動感をもたらす。

 スターは出演していないにもかかわらず、展開の面白さに圧倒される人が続出。今年の米アカデミー賞で作品賞など主要八部門を制したのをはじめ世界中の映画賞を席巻したのもむべなるかな。

 ハリウッドは今、不景気で資金調達もままならないとか。無難にヒットを見込めるシリーズものが幅を利かせているのはそのためだ。そんな状況に背を向け、“アウェー”で作られた低予算の作品が“本場”をKOしたことが痛快極まりない。面白い映画に必要なのは金ではなく、アイデアと情熱。本作はその見事な証明でもある。

 エンドロールのダンスまで、震えるほど楽しい会心作。行け行けスラムドッグ。沈んだ世相を吹き飛ばせ! 二時間。十八日から、シネ・リーブル神戸などで公開。

(黒川裕生)

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