「大鹿村騒動記」阪本順治監督
2011/07/15

遊び心満載の群像劇/演出はみ出す原田のパワー

 阪本順治監督が、長編デビュー作「どついたるねん」(1989年)以来6作品で起用した原田芳雄を初めて主演に迎えた「大鹿村騒動記」(16日からシネ・リーブル神戸などで公開)は、長野県の山村に実在する村歌舞伎を題材に、村人らの人間模様を描いた群像劇だ。阪本監督は「芳雄さんの野蛮な感じを含め、人のおかしみや大人の遊び心満載の作品に仕上がった」と手応えを感じている。

 大鹿村でシカ料理店を営む善(原田)は、300年の伝統を持つ「大鹿歌舞伎」の公演を控え、練習に明け暮れていた。その稽古場に突然、18年前に駆け落ちして村を離れた妻(大楠道代)と幼なじみ(岸部一徳)が現れる。奇妙な三角関係を軸に、村人同士の対立などをユーモアあふれる掛け合いで描く。

 原田が提案した同歌舞伎の資料や、飲んだ席でメモしたという原田の言葉「人生すべからく喜劇」「面白いの向こう側におかしみがある」「真剣に遊ぶ」―などをもとに、ベテラン脚本家の荒井晴彦と共同でシナリオを執筆した。

 佐藤浩市、松たか子ら豪華なキャスティングは「みんな原田邸でごはんを食べている人たち」。監督もその一人だ。「仲間意識ではないが、素の芳雄さんを知っている人たちの方が、芝居で自然に絡める」

 ロケは昨年11月、2週間で敢行。スタッフが少ないため、監督自らカメラの移動車を押していると、石橋蓮司は「低予算時代の、合宿しながら撮っていたにおいがする」と懐かしがったという。

 クライマックスの歌舞伎シーンには、本物の大鹿歌舞伎を知る観客ら850人がエキストラとして参加した。「彼らは見る側の“プロ”。笑いや拍手、おひねりのタイミングも抜群だった」

 アドリブも自在の芸達者たちが見せる演技を、ほぼ一発撮りでフィルムに焼き付けた。計算ずくで演出しようとしても、原田はどんどんはみ出ていく。「そっちのパワーの方がすごいし、面白いのよ。絶対的に」と阪本監督。「映画に対して向かっていく感じが勉強になった。これからは『俺の思ったようにやれ』ではなく『はみ出ろはみ出ろ』と演出したい」と話す。

 「芳雄さんに『お前とは一本もやった覚えがない』と言われ続けたけど、今回のクランクアップで『お前と初めてやった気がするよ』と。今までなんやったんやと思いながらも同感でしたね」

(平井麻衣子)

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