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刺激的な夢の連鎖
世界が認める異才、北野武の最新作は、夢と現実、妄想が入り交じる不可思議な世界。観客を不条理な迷宮へと誘い、幻惑しつつ、独特の美意識やシュールな笑い、予想外の展開で飽きさせない。北野自身が抱く、別の人生へのあこがれや破滅願望が透けて見える。
北野が監督・脚本・編集のほか、正反対の境遇の二役で主演。一人はやくざ映画などのヒットを飛ばし、芸能界に君臨するスター「ビートたけし」。一方は、コンビニ店で働きながら成功を夢見る売れない役者「北野」。うり二つの二人が、テレビ局の楽屋で出会う。
明快なストーリーや劇的クライマックスはなく、これは全編、だれかが見た夢だ。それが負け犬・北野が見た夢か、頂点に立つたけしの夢か、観客は何度もはぐらかされ、混乱させられる。
冒頭とラスト、廃虚に倒れた旧日本兵姿の北野が、銃を手にした米兵と目を交わす。映画全体が「太平洋戦争の敗残兵が見た長い夢」だとの解釈も可能だ。そしてその夢は、終わりなき無限のループを続ける。
夢特有の物語の飛躍、幻想性、唐突な場面展開や奇妙なイメージの連鎖が刺激的だ。たけしに「怪物」と評される歌手美輪明宏が本人役で登場し、場をさらうほか、巨大な青虫のグロテスクでどこかユーモラスなイメージが何度も登場。自殺や死への欲望をほのめかす場面もあり、画面にはそこはかとない無常観も漂う。これらは、監督の隠れた願望や不安、恐怖の象徴なのかもしれない。
金も女も名声も手にした「たけし」は、しがらみのない自由な日々を夢に見、抑圧された生活を送る「北野」は、輝けるスター暮らしを夢想する。貧しい北野の妄想の暴走ぶりが見どころの一つだが、現実の北野監督は、実生活でも日々、たけしという「別人格」を半ばいやいや演じ続けているのだろうか。一時間四十七分。公開中。
(堀井正純)
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