灯台守の恋 (2005/12/09)

 

切ない「大人の寓話」

 荒れ狂う海で旅人を導く「灯台」―。絶望の中、一条の希望ともなる存在だが、現代のように自動化される以前、住み込みの灯台守らが孤独と闘い、灯をともし続けた過酷な職場だった。本作に登場する灯台も、まるで人間の「尊厳」や「孤独」の象徴のよう。激しい風雨や荒波に耐え、天に向かってそびえ立つ。

 フランス版「マディソン郡の橋」ともいうべき純愛ドラマ。人妻と青年の、苦く切ないつかの間の恋を、淡々と描き出す。愛する者を裏切る痛み。許されざる恋の甘さ。そして友情と共感。過ちを許すこと。これは生きることの悲しみを知る「大人のための寓話(ぐうわ)」である。

 フランスの西端、ブルターニュ地方の小島。亡き父の家を売るため、パリから故郷へ戻った女性カミーユは、そこで一冊の本に出合う。そこには、母の秘めた恋と秘密が記されていた…。

 一九六三年、閉鎖的な島に新人灯台守として赴任した青年アントワーヌは、先輩の灯台守イヴォンの美しき妻マベと恋に落ちる。アントワーヌはアルジェリア戦争の帰還兵。アフリカでは、非人道的で過酷な任務についていた。戦争の影、よそ者に対する村社会の排他性が物語のトーンを暗くしているが、アントワーヌは人々を許し、明るい微笑を失わない。

 ハンサムな容姿ゆえ、若い島娘からも思いを寄せられるが、アントワーヌが心ひかれたのは、知的で、陰のあるマベ。ゆっくりと、それぞれの過去の傷を浮かび上がらせてゆく脚本がいい。意外な結末も、複雑で、味わい深い余韻を残す。

 この世の果てを思わせる、荒涼とした島の風景と暗い空、灯台をなぎ倒すかのように荒れる海。厳しい自然が人間の小ささを際立たせる。その世界で、恋する二人にとり、互いが光放つ「灯台」「希望」のごとき存在だったのだろう。妻に裏切られるイヴォンの渋さ、大きさが印象深く、静かなる「反戦」の訴えも心に響く。

 フィリップ・リオレ監督。一時間四十四分。シネカノン神戸で十日公開。

(堀井正純)

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