リミット (2010/11/05)

箱の中の恐怖、秀逸な演出で

 うーん、すごい。出演者はたった1人で、場所は狭い箱の中だけ。これで1時間36分の作品が成立し、目を離させないのだから。

 物語は、男(ライアン・レイノルズ)が見知らぬ箱の中で気が付いたところから始まる。出ようともがくがどこも開かない。パニックに陥る中、電話音が足元から鳴り、見覚えのない携帯電話から聞こえるのは男の低い声。携帯で自分の姿を撮って身代金500万ドルを出すように米軍に伝えろ、と言う。電話の電池残量は半分。時間がない―。

 電話のやりとりで、男は土に埋められていると知り、生き残るため電話をかけまくる。救急ダイヤル、勤め先、自分が住んでいた地域の警察…。だが誰も分かってくれない。FBIに至っては「場所が分からないとどうしようもない」と、拉致など日常茶飯事と言わんがばかりの対応で、がくぜんとさせられる。

 とにかく外界をまったく描かない演出が秀逸。通話によって男がイラクで働く米国人トラック運転手ポールと分かるなど、徐々に状況を明らかにしていく手法がうまい。

 ただポールしか映らないスクリーンを見ていると、FBI担当者は本物か? 電話の向こうにいる妻の悲しみは本当か? という疑問がわいてきた。ついには拉致自体を疑うように。情報がほとんどないと、人は何も信じられなくなる。そう実感せざるを得なかった。

 それでも、必死の形相で電話をかけ続けるポールの恐怖だけは本物だ。絶望、あきらめ、怒り…。ごちゃ混ぜの感情が彼の息づかいとともに押し寄せ、知らぬ間に呼吸が浅くなり、体が硬くなっていた。閉所恐怖症の人には薦められない。

 狭い船中での人間ドラマを描いた「救命艇」などを手掛けたヒチコックのようなスリリングな作品を目指した、というスペイン人監督、ロドリゴ・コルテス。新しい才能の誕生だ。6日からシネ・リーブル神戸で公開。

 (シネマ・パーソナリティー 津田なおみ)

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