阪急電車 片道15分の奇跡 (2011/05/06)

原作の雰囲気 丁寧に再現

 ベストセラー小説の映画化の場合、その世界観をどう表現するか、というのは重要なテーマだ。完全な再現を目指すのか。新たな世界観作りに挑戦するのか。どちらかを選ばなければならない。

 阪急今津線を舞台にした群像劇であるこの作品は明らかに前者。完全なコピーかと言えば決してそうではなく、オリジナルエピソードもいくつか登場するが、それらも原作のイメージを損なうのではなく、むしろ補完する感じだ。

 キャスティングからも“再現”の意図が読み取れる。主役級の中谷美紀や戸田恵梨香、宮本信子らは、いずれも原作に近い雰囲気を感じさせるし、演技によってその“空気感”も醸し出している。

 だからといって、原作を読んでいなければ楽しめないわけではない。ほんわかとした人間ドラマの数々は、結末を知らない方が没頭できるかもしれない。

 登場するのは、恋人を奪った後輩の結婚式にタブーとされる白いドレスで参列するOL、彼氏のDVに悩む女子大生、セレブ気取りの奥さまたちとのつきあいに疲弊する主婦、孫を連れた老婦人…。さまざまな人が電車内で交わり、それによって人生がほんのりと幸せに変化していくさまを、丁寧に映像化している。

 群像劇はエピソードが交錯するため、手際よくまとめなければストーリーが分かりにくくなりがちだ。その傾向もなくはないが、各人物がしっかりと描かれており、物語が進むにつれてそうした印象も薄れていく。

 この作品には、兵庫県民ならではの楽しみ方がある。ロケ地の多くが神戸・阪神間なので、映画の風景のほとんどが、どこかで見たことのある場所なのだ。西宮、宝塚、神戸が中心。「このシーンはあそこだな」と見つけるのも楽しい。

 1時間59分。OSシネマズミント神戸などで公開中。

(吹田 仲)

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