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欧州の貧しい若者の現実
「子供」はいつ「大人」になるのだろう。ある事件や出来事をきっかけに、少年期と決別すること。自らの力で生きると自覚すること。そんな決定的瞬間を持たず、年を重ねる人が大多数ではないだろうか。
本作は、無軌道な若者が、ようやく大人になる瞬間を鮮やかに映し出す。昨年、カンヌ映画祭で最高賞パルムドールを獲得したベルギーの名匠ダルデンヌ兄弟の最新作。緊張感ある映像には、ドキュメンタリーのような自然さ、リアリティーがあり、欧州の貧しい若者らの現実を鋭くとらえてもいる。
主人公は二十歳の青年ブリュノ。定職につかず、仲間の少年たちとのひったくりや盗品売買で小金を得、その日暮らしを続けている。十八歳の恋人ソニアが息子を産み退院してくるが、彼には父親としての自覚がない。
彼はソニアに無断で、何とわが子を闇取引で売り払ってしまう。単なる商品の一つのように。恋人がショックで気絶し、怒り狂うまで、自身が許しがたい罪悪を働いた自覚さえ、彼にはない。常識やモラル、人間的感情の欠如というほかないが、さりとて彼が冷酷非情な悪党かというとそうではない。あまりに「無知」なのだ、人間について。
ソニアにしても恋人と無邪気にじゃれあう姿は、まるで中高生のよう。多分、「子供が子供を産んだ」ということなのだろうが、女は母となることで、男より先に大人の自覚を持つ。
物語の背景にあるのは、若年層の失業率が20%に達するというベルギー社会の現実。すさんだブリュノの姿は特別なものではない。ニートやフリーターが急増し、若者が職探しに苦しむ日本にも、決して遠い国の物語ではない。
いかに立ち直り、光を見いだすのか。心許せる相手とのつながり、愛と信頼。人間らしさを手に入れること。ラストシーンの希望に、少し救われた思いがする。
ベルギー・フランス合作。一時間三十五分。二十八日、109シネマズHAT神戸などで公開。
(堀井正純)
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