ナイト・ウォッチ/NOCHNOI DOZOR (2006/04/07)

 

超能力者の死闘斬新に

 ダーク・ファンタジーかサイバー・ホラーか、はたまたSFゴシック・ミステリーかと、二重三重のキャッチコピーは、つまるところ、このロシア映画のカテゴライズされえない新しさを表している。

 セルゲイ・ルキヤネンコのベストセラー小説を、気鋭のティムール・ベクマンベトフが監督。二〇〇四年にロシアで公開されると、同国映画最高の興行収入をたたき出した。

 舞台は現代のモスクワ。ただし話は、千年前にさかのぼる。

 超能力を持って生まれたアザーズ(異種)と呼ばれる人々は「光」と「闇」に分かれ、死闘を重ねてきた。だが、全滅の危機を避けるため、光の側は「闇の監視人」(ナイト・ウォッチ)、闇の側は「光の監視人」(デイ・ウォッチ)として、勢力バランスを保つ協定を千年前に結び、互いに侵犯を控えてきた。

 ところが予知能力を持つアントン(コンスタンチン・ハベンスキー)が、闇の吸血鬼を殺したことで事態は一変し、再び全面戦争の危機が迫る。アントンの過去と、不吉な伝説と、闇の陰謀が一点で交わり、恐るべき悲劇が幕を開ける―。

 CMやビデオクリップ出身の監督らしく、技巧的な絵づくりが見せる。

 鈍く輝く幻想的な色彩は、「何か」が潜むグロテスクな空気を醸し出し、異界を強く印象付ける。

 コンピューターグラフィックスを駆使したトリッキーなアクション映像には、「マトリックス」のウォシャウスキー兄弟やタランティーノらの影響がうかがえる。だが、安直なハリウッド調にとどまらない、ロシア的なものが底を流れているように思える。

 例えば闇の異種として、スラブ世界の民間伝承に由来する吸血鬼を採用した点や、物語の展開のかぎとなる「災いを招く乙女」の背景として、ビザンチンの伝説を置く伝奇的な趣向には、土俗的な想像力が作用していないだろうか。また光と闇、すなわち善と悪の闘争の寓意(ぐうい)的な表現にも、ロシア民衆宗教詩にみられる、神秘的な終末観との共通性が認められるだろう。

 ロシアではすでに続編が公開され、第三部の製作も準備されているという。日本での上映を楽しみにしたい。一時間五十五分。109シネマズHAT神戸で公開中。

(田中真治)

HOME ・ 映画TOP

Copyright(C) 2006 The Kobe Shimbun All Rights Reserved