騎兵隊(1959年、米国)

能楽師 江崎金治郎さん

(2007/08/27)

舞台踏み知った真価

▼えさき・きんじろう 本名・康雄。1944年姫路市生まれ。高校卒業後、観世流シテ方の大西信久に6年間、内弟子として師事した。83年、第十一世江崎金治郎を襲名。86年には国の重要無形文化財に認定された。能楽協会神戸支部副支部長。9月1日に宍粟市の山崎八幡神社、8日に赤穂市の大石神社で開催される薪能に出演する。

 映劇、帝劇、松竹…。かつて姫路にあった映画館名を挙げながら、ハリウッドの西部劇などに熱中していた高校時代を振り返る。「ジョン・ウェイン、ゲイリー・クーパー、カーク・ダグラス。みんな、素晴らしいヒーローやった。ブロマイドも、ようけ集めましたなあ」

 「騎兵隊」を最初に見たのも高校時代。勇壮なマーチに胸を躍らせ、地平線を行く騎兵隊のロングショット、ウェイン演じる大佐とホールデンふんする軍医のコミカルな対立などを楽しんだ。

 生まれたのは、江戸時代から姫路藩お抱え能楽師として三百年続いてきた、福王流ワキ方の家。幼時、すでに子方(子役)として舞台を踏んでいたが、高校時代は純粋な映画ファンとしてスクリーンを見つめていた。

 生活が激変したのは、卒業時。兵庫県内の私立大学に合格、入学金も納めていたが、父の第十世金治郎が「あさってから、大阪へ行ってこい」。内弟子として六年間の修業が始まった。

 ワキ方の芸を学び、舞台経験を重ねるうち、映画の見方が変わってきた。「チャンバラを見ても、切られ役のうまさに感心した」。舞台セット、道具の作り方も覚えたことから、画面に映るあらゆる物の“出来”が気になった。さらに役者が、小道具をいかに使いこなすかにも。

 「例えばウェインは背が高いから、長めの銃が似合う。当時の西部劇は、そうした細部にまで配慮していた。ウェイン自身も下積み経験が豊富。表情の深み、他の役者との絡み方に非凡な実力を感じた」

 一期一会、真剣勝負といわれる能の舞台だが「大切なのは映画同様、作る過程」と言い切る。

 「曲(演目)を勉強し、共演者の動きを覚え、考えなくても体が自然に動くまでけいこすること。シテを食ってやろう、なんて色気を出してはだめ。結果的に食うこともあるけど…」

 関西を中心に、全国の舞台に出演。伝統を誇る姫路城に加えて近年、宍粟、赤穂の薪能にも、企画段階からかかわっている。自宅で小学生の能楽教室も開催。自身の芸を極めるだけでなく、地域貢献にも積極的だ。

 「あと数年で、長男に第十二世金治郎を襲名させる。それまでに、自分の活動を集大成し、能楽を取り巻く環境をよくしたいんです」

 道一筋に歩み、“晩年”を意識し始めた能楽師。いぶし銀の芸から、ますます目が離せない。

記事・藤本賢市
写真・青木信悟

騎兵隊(115分) 舞台は南北戦争時の米国。北軍のマーロー大佐(ジョン・ウェイン)率いる騎兵隊は、南軍の補給拠点ニュートン駅を攻める。軍医として同行するケンドール少佐(ウィリアム・ホールデン)、スパイ行為で連行された南部の女性(コンスタン・タワーズ)が絡み、物語は時にユーモラス、時にスリリングに展開する。ジョン・フォード監督。
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