5.次世代に
(掲載日:2002/08/15)
継ぐ、それぞれのやり方で
「中国帰還者連絡会(中帰連)」が今年四月、解散した。中国東北部、「撫順戦犯管理所」からの帰国者らが半世紀近くにわたって反戦を訴え、加害行為の証言を続けてきたが、約三百人の会員の平均年齢は八十二歳に達していた。
平和へ
見たい、聞きたいことがたくさんある。「ピーストレイン」の打ち合わせは、すぐに時間が過ぎる
=西宮市北口町、西宮市大学交流センター
だが、精神は残った。若者たちが各地に「撫順の奇蹟(きせき)を受け継ぐ会」を設立した。「家族を日本軍に殺された中国人は、それでも人道的に接してくれた。その経験が自分を変えた」。中帰連会員に共通する思いを、「奇蹟」という言葉に託した。
関西支部は現在、近隣に住む中帰連会員からの聞き取りに力を注ぐ。約五十人の支部メンバーの九割は、戦争体験がない。
けれど「一人ひとりの顔と名前、信念が刻まれた体温のある声に、心を動かされてきた。正確な記録を残すという形でその感動を伝えることは、私たちにもできる」と、同支部事務局長の野津加代子さん(40)。八月三日には、ビデオに収めた証言を大阪で公開した。
元関東軍国境警備隊一等兵で、中帰連会員の山口光夫さん(78)=神戸市垂水区=は「受け継ぐ会ができ、本当にうれしい。生きている限り手伝いたい」と声を弾ませる。原体験がないことも、ハンディになるとは思わない。「戦争がすべてを破壊すると知っている若い人たちは、未来が長い分だけ真剣だ」
◇ ◇ ◇
「平和集会とかに行くと、空気が重たいことが多い。義務感でやってる、みたいな感じの人もいるし」。平和サークル「ピーストレイン」代表で、甲子園大に通う神野さおりさん(20)はそう感じる。甲南大で学ぶ細川純一さん(23)の見方は、少し違う。「平和の問題が人生に直接つながってる人が重くなるのは仕方ない、とも思うけどなあ…」
阪神間の大学生ら約二十人で昨年九月に結成。二週間に一度ほど集まり、神戸空襲の体験談を聞いたり、神戸市内の戦跡を訪ねるフィールドワークなどをしてきた。
とにかく明るい。国際政治から見たい映画まで、自然体で語り合う。活動記録にも「(学習会の講師が)カッチョよかったです!」「(戦跡を見て)こんなんなったらシャレにならん」と、等身大の言葉がつづられる。
「平和行きの汽車に」と願って、会の名前を付けた。鉄路の先を照らすのは、生き抜いてきた世代の志。それを継ぎ、夏の向こうへ、走り続ける。
=おわり=
(新開真理、木村信行)
HOME
・
連載TOP
・
「夏の向こう 終戦の日を前に」目次
4<
5
Copyright(C) 2002 The Kobe Shimbun All Rights Reserved