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一人、また一人。水にこだわる人々が、ペットボトルやポリタンクを手にやって来る。管から落ちる水を器いっぱいに満たすと、みんな満足そうな顔つきに変わる。 神戸市須磨区の須磨寺の参道近く。二メートルほど階段を下ったところに「須磨霊泉」の涌水場(わきみずば)がある。まろやかな味が評判で、遠方からも人が集まる。一方で、付近の住民は、昔ながらに野菜を洗ったり、洗濯したり。 「野菜は上洗(うわあらい)、洗濯のすすぎは下洗(したあらい)とルールがあるんです」。四十年は洗濯に通っているという谷さち子さん(73)が教えてくれた。「水道水も昔ほど濁らなくなったけど、ここですすげば真っ白になって気持ちいいんですから」と、自慢げだ。 阪神・淡路大震災の直後、水道は断水したのに「須磨霊泉」は尽きることなく大勢の被災者がくみに来た。一九三八(昭和十三)年の阪神大水害でも、貴重な水源になったという。 「地震のときは数百メートルも順番待ちの列ができた。水量がかなり減り、器を満たすのに長時間かかったのに、トラブル一つなかったですよ」と、近くで酒屋を営む濱野功さん(57)は不思議がる。 ゆう出地はよく分からないそうだ。十メートルほど南西の交番下からパイプを引いているが、その先は不明。大雨が降っても、水量が増えるのは二、三週間後だとか。 きっと、地中にじっくり染み込み、味わいを増した後、わき出してくるのだろう。地元の人々に愛される神秘の泉。限りない流れが、誇らしげに輝いて見えてきた。 (写真部 岡本好太郎)
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(掲載日:2004/02/12)
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