10.最前線
(掲載日:2002/07/27)
灘五郷酒造組合理事長 小西新太郎氏に聞く
復権へ取り組み加速/変わらない魅力が命
岐路に立つ清酒業界。最前線のトップは、現状や課題をどう見ているのか。白雪ブランドの小西酒造(伊丹市)社長で灘五郷酒造組合理事長の小西新太郎氏(50)に、業界の目指すべき方向を聞いた。
―一九九一年に三十九歳で社長に就任。業界の苦境を目の当たりにしてきた
「特にここ十年は、厳しい冬の時代だ。し好が多様化したのは確かだが、それだけが原因ではない。清酒本来の良さを消費者に伝えるため、文化的背景や品質面をアピールするなど、業界の努力が足りなかった」
こにし・しんたろう
甲南大経営学部卒。1975年入社、常務営業本部長としてベルギービールの輸入販売開始に尽力。91年に社長就任。商業施設「白雪ブルワリービレッジ長寿蔵」を開設し、豪州での清酒製造を始めるなど挑戦の姿勢を貫く。99年から灘五郷酒造組合理事長。
―若い世代の酒離れも進んだ
「正確には“酒離れ”でさえない。若い世代は初めから酒の世界に入ってきていないからだ。フランスでもワインを『ダサいオヤジの飲み物』と感じる若者が多いと聞く。親が酒を飲んで酔っぱらってきた姿が印象を悪くしているようだ。イメージをどう高めていくか。若者を引きつけるためにも真剣に考えなければならない」
―ほかのアルコール類の躍進もあり、「このままでは日本酒が滅びてしまう」との悲観的な声も聞こえる
「米を原料とする清酒は味の良さはもちろん、美容と健康にもいい。長い歴史が裏付けるように安全性に揺らぎはなく、環境保全にも貢献できる食品だと自負している。消えると言われた焼酎も頑張っている。要は、酒の良さをいかにアピールできるかだ」
「最近は品質管理面の成熟度も高まった。長年の研究で酒造りの複雑なメカニズムが解き明かされ、あらゆる味わいを一定に出せるようになってきた。消費者のさまざまなニーズに応じた商品を提供していけると思う」
―来秋、酒販免許の取得制限規定が見直されるなど、業界の規制緩和がいよいよ本格化する。再編も取りざたされるが
「蔵が半減するとの話もある。希少価値のある酒に特化するとか、新機軸の酒を提案するなど、ビジョンを明確に持たないと生き残れない。惰性で酒を造る蔵は、店じまいするしかない」
―顧客離れの一因として、業界の閉鎖性が指摘されている
「量販店が消費者の声を反映させたプライベートブランド戦略を展開したとき、時代はここまで来たと感じた。酒造業界にも意識改革が必要だ。幸い今はインターネットなどもある。顧客の声を直接吸収していきたい」
―兵庫は全国最大の酒産地。現状と課題は
「業界を引っ張るべき地域の一つだが、震災復興で体力を消耗した。しかし、立ち直りの早さに底力を感じた。需要開拓の新しい商品づくり、高級酒の位置付けの明確化、料理との組み合わせの提案…。清酒復権に向けた取り組みを加速させたい。日本酒の将来に悲観はしていない。変わらない魅力がある限り、展望は開ける」
(佐伯竜一)
=おわり=
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