心理作用考え表現駆使/視覚障害者にもメッセージ

 一通の手紙が、音響機器メーカーのTOA(神戸市)に届いたのは、二〇〇〇年の年の瀬。「神戸ルミナリエ」が終わって間もないころだった。

 手紙には、感謝の言葉とともにこう書かれていた。「今までルミナリエがどんなものかわからなかった。でも音を聴き、やっとイメージできました」。差出人は、目の不自由な人だった。
光に包まれ温かくなった心。音がそっと支えていた=2000年12月、神戸市中央区

 二十万個以上の電球がきらめく神戸ルミナリエ。会場に「音」が加わったのは五年前のことだ。手がけたのはTOAと同社の音楽ソフト制作子会社「ジーベック」。

 「鎮魂と復興への思いを本業である音で伝えられないか」。被災地の企業の提案で始まった音の演出は、本場のイタリアにも、東京の「ミレナリオ」にもない。手紙は、鎮魂の思いを光の見えない人にも伝えられる“音のルミナリエ”の可能性を示唆していた。

 音による空間の演出。発想は約二十年前に生まれた。音が担う役割は研究とともに膨らむ。人間に及ぼす心理作用の分析や、音をデジタル加工する技術も進んだ。表現力は飛躍的に向上した。

 「例えばテレビゲーム」とジーベックの前田耕造さん(32)。「場面の切り替わりなどは画面よりも音が誘導している。聴覚は状況変化を感知するスピードが速いんです」

 音のルミナリエは、こうした音の表現力を駆使して作られた。昨年の場合、会場を六ブロックに分け、「星たちの祈り」から「悲歌」「安息の時」を経て「喜びの光求めて」に至るストーリー性のある曲を流した。作曲は原音の収録から始まり、グレゴリオ聖歌を中心に、バイオリンなどの弦楽器の美しい調べを、テーマにそって絡ませた。

 音響の調整は新たな挑戦だった。毎年四、五百万人が訪れる会場。人々は音を求めているわけではない。「あくまでも光が主役。会場の雰囲気を壊さずに、何となく聴こえる音をどう出すか」。前田さんらは最適音量を求めて、何度も雑踏での測定調査を続けた。

 こうして、会場には百八台ものスピーカーが配置され、数十万の観衆に均一に聞こえる環境がつくられた。

 震災の時は東京にいたという前田さん。「音づくりを通じて、初めて被災した人たちと気持ちを分かり合えた気がします」。今年もまた、音づくりが始まろうとしている。=おわり=

 この企画は記事を足立聡、写真を福田晃一、高田裕司、藤家武が担当しました。

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