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| 3. 遺された者 | ||||
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気付けば父と同じ苦しみ 神戸市内で水道管工事の工務店を自営する英雄(30)=仮名=の父が、自ら命を絶った一九九八年。その年、震災から三年を経た兵庫県では、自殺者が前年に比べ一・五倍に激増した。 被災地に吹く不況風は、震災後遺症による地域経済の低迷にさらに拍車をかけた。厳しさは、父の死後、工務店を継いだ英雄の仕事や家族にもじわりと影響を与えた。 父が残した商工ローンからの借金三千万円は遺書通り、保証人の母が父の生命保険で完済した。しかし、英雄の下には妹が四人おり、一番下は当時中学生。母は家計のやり繰りに追われた。 仕事の方は高校卒業後、父の下で現場を踏んだが、工務店のやり繰りは素人。工事はあっても、契約代金が回収できず、値をたたかれれば、人件費を削るしかなかった。 金を工面するつてを探すうち、気が付くと、かつて父が借金をしていた商工ローンに頼っていた。「なんて親不孝者や」。先行きの不安より、自己嫌悪に襲われた。 次第に利息分しか返済できない月が続き、別のクレジット会社からも借金。債務が約三百万円に上り、すがる思いで多重債務の相談機関を訪ねたのは、父の死から二年半後のことだ。 特定調停や、法定利息を超える支払い金の返還を業者に求める過払い訴訟などを経て、債務整理はなんとか進んだ。しかし一方で、自責の念が胸を締めつけた。 「あのとき、自分にもっと知識があれば、おやじを救えたかも…。身内が殺したようなもんや」 悔悟の思いに駆られ、ヤミ金被害者らの相談に乗るようになった。「数百万円のことで死を選ぶ人が後を絶たない。それがいたたまれない」。自分の相談に応じてくれた被害者の会で、今は世話人として活動する。 生活は決して楽ではない。先月は結局、仕事が入らなかった。週何回かは夜のアルバイトにも出る。「でも、おやじのような選択はできない」と英雄は言う。 五年前の「父の日」。保険金での借金返済のため自ら死を選んだ父の遺書には「ずっと悩んでいたが、父の日で決心がついた。けじめをつけようと思う」とあった。 「仕事や借金のしんどさも知り、父を許す気持ちにもなってきた。でも、家族に相談もなしにどうして、という思いは消えることはない。割り切ることなんてできない」 遺(のこ)された者の思いが分かっていれば、踏み越えることのできない一線がそこにある。(敬称略)
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