10.面白CM(2003/06/04)
本音勝負のインパクト
 
 大阪・御堂筋。路上駐車のマイカーの前で、中年の女性がまくしたてる。「みんな止めてるやないのー、なんで私だけ言われなあかんねんなっ」。そこにかぶさるナレーション。「おるおる、こういうおばちゃん」

 一九八九年に放映された大阪府の迷惑駐車追放のキャンペーンCM。

 その強烈さに度肝を抜かれたという、当時の大阪府の担当者(46)が振り返る。「知事のOKが出るかどうか心配だった」

 しかし反響は絶大で、このCMによって逆に大阪の不法駐車のすさまじさが知れわたったほど。

 「狙ったのはリアリティー。大阪のおばちゃんは、地のまんまを出してくれるからええ」と、手掛けた電通関西支社元ディレクター堀井博次(66)=京都市出身=がいう。

 堀井らの原点は「関西電気保安協会」のコマーシャル(七六年)だ。同協会検査員の間の悪い演技と、たどたどしいセリフ回し。素人の下手さ加減が、かつてない話題をさらった。

 以後、関西からはダジャレや語呂合わせも交えた、CMのタブーに挑戦する作品が競って生まれる。

 美人女優やスターには、そのイメージを覆す「ボケ」を求めた。阪神タイガースの4番打者・掛布を起用した「金鳥蚊とりマット」(八〇―八六年)、今も続く沢口靖子主演の「タンスにゴン」シリーズは、その典型。「亭主元気で留守がいい」。独特のストレートな表現は、東京制作のスマートさとは無縁だ。

 「私らが受けるんは、本音の面白さなんやと思う」。「兄ちゃん、これ替えてえな」と、レジ前でいきなり服を脱ぐユニクロのCM(九五年)の辻イト子(54)=大阪府岸和田市=が豪快に笑う。

 わずか十五秒のドラマが、“けったいな”面白コピーとともに、今日もブラウン管で躍動する。(敬称略)

=おわり=(文化生活部の亀山正芳、岡崎丈和、堀井正純が担当しました)

 
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