尼崎JR脱線事故
片輪状態でブレーキか 転覆引き金の可能性
現場手前のカーブにある時速70キロ制限の標識。奥に事故車両の最後尾が見える |
尼崎JR脱線事故で、快速電車が高速で右カーブに突入し、遠心力で右車輪が浮いた前後に、非常ブレーキが作動していた可能性のあることが二十九日、分かった。右カーブを走行中に左車輪だけが固定されると、外側に飛び出す力が働くといい、転覆の引き金となった可能性が指摘されている。
脱線電車は制限時速七十キロの右カーブ(半径三百メートル)を百八キロで走行し、非常ブレーキが作動していた。
電車は線路左側に脱線し、マンションに突っ込んだ。ところが、右車輪が通過したはずの左レールを傷つけた跡はなく、レール間の枕木上を走行した様子もなかった。このため、強い遠心力で右車輪を浮かせたまま左側に倒れた「転倒脱線」だった疑いが強まっている。
一方、ブレーキは通常、両車輪に均等に制動力が掛かるが、左側の車輪だけが固定された場合、反時計回りにコンパスのような回転運動が発生。この結果、車両を左側に傾ける力が働くという。
速度超過による遠心力だけで脱線したとは考えにくいため、捜査本部などは複数の要因が作用したと判断。片輪走行が始まった後か、その前段階として右車輪に掛かる荷重が左に比べ小さくなった際に、急制動していた可能性があるとみている。
ブレーキの作動時期の解明には、レール上に残るスリップ痕が手掛かりとなる。敷石が砕かれて付着した白い粉末に隠れている可能性は残されているが、明らかな痕跡はまだ見つかっていない。
■線路脇の電柱が損傷 転倒脱線裏付け
国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は二十九日、尼崎JR脱線事故で現場の線路進行方向左側にある電柱に、快速電車が脱線した際、当たってできたとみられる損傷があったと発表した。
事故調委は、電車が右カーブに高速で進入、車体が大きく左側に傾いた際に電柱に当たった可能性が高いとみており、転倒脱線を裏付ける重要な物証としている。
マンションから引き出された、原形をとどめないほどに損壊した一両目の写真も公開した。
事故調委によると、この電柱は、現場で止まっている事故車両の最後尾七両目の左脇にある。枕木の端から約二メートルの所。ちょうど電車が斜めに傾いた時にぶつかるぐらいの高さ約二・五メートルの部分が大きく損傷し、鉄筋がむき出しになっていた。車両自体の高さは三・七メートル。
付近にはパンタグラフも落ちており、線路沿いに立っていたフェンスも斜めに倒れていた。
事故調委は二十九日までに、非常ブレーキ作動時の速度などが記録される「モニター制御装置」を一両目から回収。車両は大破したがデータは残っており、今後五、七両目から回収した装置のデータと比較して事故時の速度の推定に役立てる。
国交省で説明した佐藤泰生鉄道部会長は「今後は一両目の車輪の状態が調査のポイント」とした上で、「ブレーキが(脱線に)何らかの影響を与えたと考えるのが妥当で、非常ブレーキで車輪がロックした時に削れてできる痕跡がないかなど、ブレーキと脱線の関連を調べたい」と述べた。
【転倒脱線】 国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は、車両が傾きながら脱線する事故の状態を「転倒脱線」と呼んでいる。 鉄道工学の分野では脱線が起こる形態を三つに大別。 車輪とレール間に横方向の力が加わり、車輪がレールに上がる「乗り上がり脱線」、車輪とレールの接合面がかみ合わず車輪が滑って外れる「滑り上がり脱線」、地震など急激な力で車輪がレールに上がる「飛び上がり脱線」だが、今回の脱線がこのいずれに当たるかはまだ確定していない。
(2005/04/30)
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