伍魚福の全社員が、会社、個人の計画や目標を書き込むノート。「上司と部下の対話を増やすきっかけにもつながる」=神戸市長田区野田町 |
<カイゼンのポイント>
目標を明確化して業務に連動
数字ではなく仕事の喜びを追求
最後の決め手は対話
「もう少し目標をシンプルに書けば、行動予定も立てやすくなるんと違うか?」。神戸市長田区の珍味製造卸、伍魚福の会議室。社員との個人面談に臨む山中勧社長(43)が見入るのは、社員が手書きした一冊のノートだ。週間、月間、年間予定や目標がびっしり。「ただ書くだけではだめ」と山中社長。「目標を共有し実現するには、対話での補完が欠かせないことが分かってきた」
同社が全社員に同じノートを配ったのは二〇〇〇年。コンビニの台頭などで得意先の酒販店の閉鎖が相次ぎ、売上高はピークから約三割減の十七億円に追い込まれた。
「トップはさまざまな手法を試行錯誤しながら、全社員に経営感覚を身に付けさせたかったんでしょう」と、当時、営業担当のお客様繁盛推進部長だった山中社長。「社内には『言われたことだけをしていればええ』という空気があった」
ノートには目標や計画を、全社、部署、個人の各レベルに整理し、年間、月間、週間別にスケジュールを書き込む。目的を念頭に置き、日々の業務に連動させる狙いだ。
この年、業績回復に向け得意先に食品スーパーを加える新規開拓に取り組んだ。同時にカタログの卸通販もスタート。〇七年度には、若手社員らの一部が幹部とともに中期経営計画を策定、売り上げは回復してきた。
社員たちの議論も活発になった。そこで「上司と対話ができていない」との声が聞かれたのを受けて、二〇〇八年度から、山中社長自ら年四回に上る全社員との面接を始めた。社員の一人は「ノートがあると課題を整理しやすい。書いて上司と話してみると、取るべき行動もイメージしやすくなった」という。
一冊一冊のノートには「仕事を通じて人格の向上に喜びを感じる」という企業の経営理念を浸透させる思いがこもる。山中社長は十冊目となったノートを手に「使いこなすのはこれから」と苦笑するが、「昨年の社内商品アイデアの優秀作が、この春に焼き鳥の新製品になった。理念の通り、働き手が仕事で喜べる会社にできたら、数字もついてくる」。唱えてきた「神戸で一番おもしろい会社」の風土の芽吹きを感じている。
(佐伯竜一)
〈データ〉
明治期から食品販売を手掛け、1950年代ごろから、珍味を酒販店などに直接卸し始めた。80年代には全国の協力工場で生産。2009年2月期の売上高は約20億7100万円。従業員はパート約20人を含め約60人。
(2009/05/27)
Copyright© 2011 神戸新聞社 All Rights Reserved.