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政治の宿題 2010参院選

(中)少子化、歯止めかかりますか?目先の手当より、将来への投資を

 画期的な少子化対策か、それとも人気取りのばらまきか。支給が始まっても、子ども手当をめぐる議論が熱い。

 日本の社会保障費の給付内訳は、高齢者向けが70%を占め、子ども向けはわずか4%。国内総生産に対する子育て支援のための支出比率(0・81%)は、スウェーデン(3・21%)やイギリス(3・19%)に比べ圧倒的に少ない。「子どもを大切にする国に向かう第一歩だ」と評価する一方、「現金より保育サービスなど子育て環境の充実を図るべき」という意見も根強い。

 3歳の娘がいる記者の夫の銀行口座にも、2カ月分2万6千円が振り込まれた。家計にとっては助かるが、使い道はまだ決められない。

 2009年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むと推計される子どもの数)は1・37で、08年と同水準。05年を底にしばらく上向いていたが、景気後退が影響したようだ。母数となる女性の数自体も減っており、出生率は横ばいでも、生まれた赤ちゃんの数は前年から約2万人減だ。

 心配されているのが年金などの社会保障制度だ。現役世代がお年寄りを支える仕組みのため、高齢者の比率が高まると、行き詰まる恐れもある。

 団塊の世代が一斉に退職し、社会保障費の給付が膨らむなどと騒がれた「2007年問題」。実際には雇用延長や再就職などで影響は少なかった。神戸大学大学院の宇南山卓(うなやまたかし)准教授(35)=日本経済論=が危ぶむのは団塊の世代が65歳になる再来年。懸念されるのは年金給付の本格化による社会保障財政の悪化だ。

 基礎年金の場合、受け取る高齢者1人に対する被保険者は2・4人。このまま少子化が進むと、25年度は1・7人になる。国は今の20代についても、「払った保険料以上の年金を受けられる」と試算するが、賃金上昇率などの前提条件が甘く疑問視されている。

 「社会保険庁の不祥事をなくしても、事業仕分けをしても焼け石に水。少子化に今すぐ手を打たなければ」

 子どもを持つ持たないは個人の自由だが、国の出生動向基本調査では、既婚者、未婚者ともに希望する子どもの数は2人以上だ。理想を現実にする妙案はあるのか。

 「未婚者への政策が必要だ」と宇南山准教授は分析する。結婚した女性の出生率は1970年代からほぼ変わっていないが、婚姻数が約3割も減ったからだ。

 多くの女性は結婚・出産をきっかけに仕事を辞めている。いったん正社員の立場を失うと、復帰は難しく、再就職もままならない。

 「女性の賃金が上がり、生活の安定という意味で結婚のメリットが薄れた結果、結婚や出産が逆に負担になっている。保育所を整備して、安心して働き続けられるようにすれば、長期的に婚姻数を増やせる」

 「本当に子育てが難しい社会だと実感した」

 西宮市の会社員の女性(34)はつぶやいた。

 長男の育児休業後の復帰を控えた昨秋、管理職からパート勤務に変わるよう上司から告げられた。認可保育所に空きが無いため、割高な無認可園への入所を決めた直後だった。公的機関に相談したが頼みにならない。上司と話し合ったが、会社の姿勢は変わらず、結局転職した。

 「子どもは3人が理想だけど、こんなことが繰り返されたらと思うと…。当分考えられない」

 保育や教育の質、親の労働環境の改善…。少子化の要因はさまざまな分野にまたがる。女性が感じている将来の不安は、子ども手当だけでは解消されない。

 「大切なお金。目先のことではなく、国は将来のために使ってほしい」。現物給付と現金給付のバランスを政治はどう取るのだろう。

(萩原 真)

(2010/06/22)

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