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元兵庫県議・野々村被告裁判

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 1年7カ月前の「号泣会見」を思わせる異様なやりとりが続いた。政務活動費(政活費)の不自然な支出をめぐる事件で、詐欺罪などに問われた元兵庫県議、野々村竜太郎被告(49)のやり直し初公判。弁護側、検察側双方の問いに「記憶にございません」「覚えていません」を90回以上連発しつつ、取り調べの様子は詳細に語り、警察批判を展開した。何を記憶し、何を忘れたのか。真相に一歩も近づかぬまま、約3時間の被告人質問は終わった。

 26日午前、神戸地裁101号法廷。頭をそり上げ、黒いスーツに身を包んだ野々村被告が入廷した。裁判長、検察官、弁護人、傍聴席の順に腰を直角に曲げて一礼。メモを大声で読み上げ、起訴内容を否認した。

 午後からの被告人質問。弁護人が政活費の総額や領収書の管理方法を問うと、同じせりふを繰り返した。

 「思い出すようがんばりますので、お待ちいただけますようお願いします」

 20秒ほどの沈黙。そして、「思い出せません」。そのやりとりが何度も続く。記憶障害の可能性があると診断されたことも説明したが、佐茂(さも)剛裁判長から「今日何を聞かれるか分かっていたはず。記憶のあるなしはすぐに答えられるのでは」とたしなめられる場面もあった。

 質問者が検察官に変わると一層苦しそうな表情に。「緊張して、右側(の耳)でないと言葉の意味が理解できません」と告げ、左側にいた検察官の方に右耳を向けようと上半身をよじった。

 東京や福岡、城崎温泉への出張で何を調査したのか。本当に行ったのか。すべて「覚えておりません」。

 自宅から押収された領収書がモニターに映され、単価と数量に修正テープを貼った部分が示された。「あなたがやったのでは」。質問が核心に迫ると顔をゆがめ、またも「覚えておりません」。

 一方で警察批判は明快だった。取調官らの実名を挙げ「ほとんど主張を聞いてもらえなかった」「恐怖と不安でいっぱいだった」「(領収書の改ざんは)警察官がやった可能性がある」と主張した。

 終始戸惑った表情の佐茂裁判長が最後に聞いた。「あなたは何度も『覚えていない』と言ったが、部分的に覚えていることもあった。区別の基準があるなら説明してほしい」

 被告は明快に答えないまま、小走りで法廷を立ち去った。

2016/1/27