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高齢者連載「好齢者たち」〜長寿社会を生きる 第4部 健やかな老い

(5)老年期うつ生活環境の変化に注意

種類の豊富な抗うつ薬。生活環境の変化などで、必要とする高齢者が増えている=神戸市内

種類の豊富な抗うつ薬。生活環境の変化などで、必要とする高齢者が増えている=神戸市内

 「眠れない」

 4年前、70代の女性が、神戸市中央区のクリニックを訪れた。夫の認知症が進み、暴言や暴力に追い詰められていた。すぐにうつ病と診断され、投薬治療が始まった。

 診察したのは、高齢期の心の病や認知症を専門にする「シルバー外来」。若栄(わかえ)徳彦院長(51)が2002年に開設した。

 女性は、診察で認知症について説明を聞くうち、夫の行動を少しずつ受け止められるようになったという。「投薬の効果に加え、本人が介護を前向きに考えられるようになったことが大きい」。若栄院長が振り返る。

 思考力などが低下し、認知症に似ているとされる「老年期うつ」。シルバー外来や物忘れ外来といった専門の受け皿は、ここ数年で登場し始めた。

 若栄院長によると、5年間の受診者100人中、アルツハイマー病の認知症が45%。うつなどの気分障害や不安障害も30%だった。一般外来で病名が分からず、駆け込んだ患者もいた。

◇    ◇

 気分障害は増加傾向にある。厚生労働省によると、05年の患者は約92万人で、10年前の倍だ。うち高齢者は27万人で、同様に倍増。特に、70代の女性が10万9千人と目立っている。

 老年期うつ患者らには、特有の背景もある。配偶者や友人との死別、治療や長期入院、施設入所による転居、介護、独居、退職による社会的地位の低下…。こうした生活環境の変化が「引き金」となる。

 最近では、男女問わず、ホルモン減少による更年期障害の影響も明らかになってきている。

 「高齢期は、他の世代にはない『喪失』が続く。乗り切れるかどうかは、人生の充実感や、陽気な老い方が関係する」

 予防医学心理学研究室(神戸市東灘区)の臨床心理士岡崎順子さんの指摘だ。

◇    ◇

 誰もが、老年期うつ患者となるリスクを抱える中、ある心理学療法が注目されている。「回想法」と呼ばれる手法だ。

 患者に人生を振り返ってもらい、充実していた時期の記憶を呼び戻すことで脳を活性化。生活意欲を向上させる。

 市民レベルで広がる「傾聴ボランティア」も、同様の効果で、予防にも役立っている。

 川西市の利岡勝司さん(69)は、3年前から市内で取り組み始めた。独居や介護の必要な高齢者を訪ね、一人一人の言葉に根気よく耳を傾ける。

 「苦労話も多いが、話し終えるころには生き生きしてくる」と利岡さん。活動に携わりながら「私自身もどう老いていくかを考えさせられる」という。

 老いや死の不安と直面する高齢期。それらを知り、受け止める心の準備が欠かせない。

(石沢菜々子)
=第4部おわり=

(2009/06/26)

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