「雪よ岩よわれらが宿り…」。雪山讃歌の歌詞は誰もが口ずさむ。作詞は京大教授を務めた化学者の西堀栄三郎さんである。登山家としても知られ、雪で足止めを食った際に書き上げたという◆西堀さんが南極の地を踏んだのは、55年前の今ごろだ。南極地域観測隊の第1次越冬隊長として1年間滞在した。日本隊が初めて臨んだ極地の冬は、全てが未知の世界だった。その体験を「南極越冬記」(岩波新書)に書き残している◆「とにかく生きて帰れるかどうか」。冬山の経験があり「困窮欠乏に耐え得る」11人が選ばれたが、機材の故障が続く。雪嵐で遭難の危機にも直面した。助けを求めようにも、当時は電信か無線以外に情報発信の手段がなかった◆その南極から、豊岡市職員の宮下泰尚さん(43)が写真やメールをネットで日本に送ってくる。第53次観測隊に参加しており、地元の植村直己冒険館がブログや小中学生向け新聞の形で紹介している◆自治体職員の観測隊入りは県内で初めてだ。ごみ関係の業務経験を買われ、環境保全を担当する。「夢がかなった」という宮下さんから最近、南極の夕焼けの風景が届いた◆南極はこれから冬場を迎える。かつてほどの危険はなくても、今年は南極でも雪が多いそうだ。準備不足の冒険は自然の報いを受けると、西堀さんは書いている。南極便りは楽しみだが、どうか気を付けて。春を待つ兵庫から越冬の無事を祈る。
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