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社説

大都市のかたち/住民に届く地方自治の議論を 

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 大阪市長選が11月27日に投開票される。地方自治の在り方そのものが大きな争点となりそうだ。

 橋下徹大阪府知事は府と市を解体・再編する「大阪都」構想を掲げ、くら替えによる市長選立候補に意欲を見せる。これに対し、平松邦夫市長は大阪市の権限を拡大して府から独立する「特別自治市」を唱えて再選を目指す。

 「大阪都」か「特別自治市」か。2人の主張は真っ向から対立している。どこが違い、何が問題なのか。知事、市長のダブル選が現実味を帯びるなか、大都市の自治のかたちについて広く考える機会にしたい。

        ◇

 橋下知事と平松市長は就任当初、協調路線を歩んでいた。

 だが、知事が地下鉄路線の新設や水道事業の統合などに意欲を見せても、事業主体である大阪市などとの協議がうまく進まなかった。やがて地域政党「大阪維新の会」を立ち上げ、大阪都構想を掲げて大阪市解体を公言するようになった。

 維新の会の推進大綱などによると、都構想は大阪、堺の2政令市を廃止し、大阪府と統合して大阪都をつくる。さらにその下に30〜50万人規模の特別区を設置する。東京都と23区のような制度だ。

 都は広域行政を受け持ち、小自治体の特別区は教育や福祉などの住民サービスを提供する。区長は公選制にして中核市並みの権限を持たせ、財源として現在の大阪市が各行政区に投じている平均650億円を保障するという。

【都構想と特別自治市】

 狙いは府と政令市の二重行政を解消して、一元化することにある。知事と市長の役割を1人の都知事がこなす格好だ。特別区は特色あるコミュニティーづくりに取り組むことで、これまでより地域色が打ち出せるとしている。

 一方、平松市長は逆に大阪市の権限を今よりも強め、府の関与をなくす道を目指す。特別自治市という大都市制度を創設する構想である。

 二重行政の解消という点では、2人は一致している。ただ、府と政令市の解体を目指す知事と、府からの独立を打ち出す市長の方向性は異なる。大都市が抱える問題への危機意識は同じでも、目標とする自治のかたちが違う。

 しかし、外枠の議論ばかりが先行し、住民の暮らしがどう変わるかという肝心な点が掘り下げられていないのが残念でならない。

 府や県と大都市の対立は今に始まったことではない。かつては東京にも23区のエリアに東京市があった。現在の都政は、戦争中の国による行政統制で市が廃止された結果である。

 戦前、東京市に神戸、大阪、名古屋、京都、横浜を加えた六大市が府県と同格の特別市として独立する運動を進めたことがある。しかし、府県側の反対が強く、それに代わる暫定措置として戦後、今の政令市制度ができた。

 ただ福祉や保健衛生、都市計画などの権限は府県から移譲されたが、一部に府県の関与が残り、税財源も確保されていないとの不満が政令市の側にある。「未完の大都市制度」とされるゆえんだ。

 制度ができた当時と比べ、経済状況や人口の集中など、政令市を取り巻く環境は一変した。神戸市では、市と兵庫県がそれぞれ公営住宅を建設しているが、市は「税収が減る中で施策を展開するには、財源を移管してもらい、市が一括して建てた方が効率的」と強調する。

【活発な政令市の動き】

 大阪市や神戸市などの大都市には、現在の制度では行政需要に十分対応できないという思いが強い。人口要件の緩和で70〜80万人という中規模の政令市も増えた。人口や規模に見合った大都市のあるべき姿を考える時に来ている。

 大都市の動きは活発だ。横浜、大阪、名古屋の三大市は2008年に、府県から独立した大都市制度を目標に研究会をスタートさせている。全国19の政令市長でつくる指定都市市長会も「大都市に権限を集約させることで、全国の活力アップを図る」として、制度導入に向けた検討を始めた。

 片山善博前総務相は在職当時、「重要な問題提起だ」として、第30次地方制度調査会で検討する方針を示した。野田政権も地方の声を受け止め、制度見直しへの議論を急がねばならない。

 地方自治制度は住民サービスやまちづくりと密接に関わる。大阪のように首長同士が将来像について意見を戦わせる機会を持つことは、住民にも意義がある。

 しかし住民に最も近い基礎自治体である市町村の役割を重視するのが分権論議の流れだったはずだ。橋下知事の都構想は斬新に響くが、大阪都をつくることが地域の自立や住民サービスの向上につながるのか。本当に無駄がなくなるのか。橋下知事は説明を尽くすべきだ。

 「大阪市をつぶす人たちと戦う」と橋下知事を批判する平松市長も、目指す大阪市の姿とメリットをもっと具体的に語るべきである。

 地方自治の主役である住民を蚊帳の外に置いた論争に走るようなことがあってはならない。一人一人の有権者の胸に届く論戦を期待したい。

(2011/09/24 10:10)

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