―復興住宅アンケート―
(掲載日:2004/12/16)

近隣や友人、親類とのつきあいは震災前に比べて減り、3人に1人は震災前に住んでいた地域に足を運ぶ。高齢世帯が多く、79.3%が年収200万円未満。半数強が「給与、年金、蓄え」や健康について不安を感じている。災害復興公営住宅アンケート調査からは、震災から10年という月日がたっても、新しい生活になじめぬ姿や経済的に厳しい暮らしぶりが浮かび上がる。コミュニティーづくり、見守りなどにきめこまやかな支援が求められている。

(網 麻子)

暮らし 今も厳しく/年金や健康に不安

〈住宅への評価〉  ◇災害に強く「安心」◇

 現在の住宅のよい点は、半数強が「災害に強く安心」「風呂がある」「室内に段差がない」を挙げた。「特にない」はごくわずかだった。

 不安な点や困っている点では、「特にない」が最も多く三割を超えた。復興住宅そのものについては、評価しているといえそうだ。

 ただ、困っている点には、二割が「気軽に立ち寄って話ができるところがない」を挙げ、「狭い、間取りが悪い」「鉄の扉で孤独」などの不満も。中高層の鉄筋コンクリート住宅には、なじめない面があるようだ。

 周辺の環境で困っている点では、「道路や鉄道などの音がうるさい」が約四割を占めトップ。「排ガスや煙で空気が汚れている」も二割近くあり、周辺環境への不満が表れ、住宅そのものへの評価と対照的だ。

〈住み続けるか〉  ◇定住 思い複雑◇

 「ずっと住み続ける」「当分住む」と答えた人の合計が82・6%を占めた。多くが終(つい)のすみかと考えているようだ。

 一方で、震災前の住居と現在との比較を問うと、「どちらかといえば」も含め、「今の団地がよい」(38・4%)と「震災前がよい」(36・1%)がほぼ同じ。「どちらともいえない」も四人に一人いる。復興住宅を希望した理由は、「家賃が安い」「他に行くところがなかった」「新築できれい」「災害に強く安心」などが上位を占める。76・0%の人がすでに復興住宅で五年以上過ごしており、複雑な思いを抱えながら、定住を考えている様子がうかがえる。

〈友人、親類とのつきあい〉 ◇距離、病気で疎遠に◇

  友人、親類とのつきあいは震災前と比べ、「よくある」が31・9ポイントも減少。逆に「少しある」が16・1ポイント、「ほとんどない」が15・8ポイントとそれぞれ増えた。

 つきあいの変化については、「特にない」(37・4%)が一番多いものの、「遠く離れ減った」(34・1%)「自分の体の具合が悪く、減った」(23・2%)「相手が亡くなったり病気になった」(23・0%)が続く(複数回答)。

 震災後、仮設住宅などから復興住宅へと短期間に転居を余儀なくされた入居者が、友人や親類と疎遠になったことが表れている。高齢化が進んでいるだけに、距離や病気がつきあいを阻害する要因となっている。

 つきあいを、「楽しい」とする人が、震災を経て24・6ポイント減り、寂しく感じたり、無関心な人が増えている

〈人づきあいの頻度〉 ◇「週1回もなし」 半数近くも◇

 近所の人、友人、親類とのつきあいの頻度は、「月に一〜二回」が最も多く、三割程度。「訪ねてこない」も二割弱あり、週に一度もつきあいがない人は、46・1%と半数近くになる。

 近所づきあいや友人・親類とのつきあいを尋ねた設問では、いずれも震災を経て、「よくある」が大きく減り、「ほとんどない」が増加。その結果が映し出されている。

 復興住宅に設けられた集会所は、「利用したことがない」が四割にのぼる。週に一回以上利用しているのは一割にすぎず、住民同士の交流を図るため、集会所の有効利用や行政、民間を問わない支援が求められる。

〈住んでいた地域に行くか〉 ◇今も消えぬ愛着◇

震災前に住んでいた地域には、三人に一人が「しょっちゅう行く」「年に何回か必ず行く」と答えた。「特に行きたいと思わない」が最も多いものの、「以前はよく行った」など、元の地域への愛着は消えていない。

 訪問の理由は「買い物・用事」がトップ。「なつかしい」「友達に会う」が続き、精神的な要因も大きいことが分かる。

 「行きたいが行けない」人が一割弱いる。「体調が悪くて行けない」(43・4%)「知り合いがいない」(38・2%)を理由に挙げ、あきらめきれない思いがにじむ。

〈外出の傾向〉 ◇半数が「ほぼ毎日」◇

 半数の人が「ほぼ毎日」外出している。二〇〇一年の調査では、震災前に七割あった「ほぼ毎日」が、40%台に減っており、今回わずかに回復した。一方で「月一〜二回」しか外に出ないという人も、約5%いる。

 目的を見ると、買い物が八割弱にのぼり、五割強が通院を挙げた。「散歩」「友人、親類と会う」が続く。外出頻度別では、「ほぼ毎日」の世帯だけは、仕事が三番目に多かった。

 また買い物は、生活の楽しみを聞いた設問(複数回答)でも35・1%とトップで、暮らしの重要な要素となっている。

〈震災前と現在の暮らし〉 ◇「満足」は14・8ポイント減少 ◇

 震災前と現在の暮らし全般についてどう感じているかを聞いたところ、「とても満足」と「やや満足」を合わせた値は震災前から14・8ポイント減少。逆に、「やや不満」と「とても不満」の合計は14・3ポイント増えた。元の暮らしを取り戻せないことへのいらだちが数字になって表れている。

 「震災前の暮らしを思い出すか」の設問では、「いつも」「時々」「最近はよく」思い出すと答えた人の合計が67・7%にのぼった。

 生活の楽しみでは、「友人と会うこと」や「買い物」が震災前も今も上位を占めた。「近所の人とのおしゃべり」は震災前から半減し、「テレビやラジオ」が約10ポイントも増加。近隣とのコミュニケーションが以前より薄いことをうかがわせる。

〈不安に感じること〉 ◇金銭面の悩み切実◇

  今の生活で不安に感じることの複数回答では、五割強が「給与、年金、蓄え」「自分や家族の健康」を挙げ、「将来の介護」も半数に迫った。「不安はない」は一割しかなかった。

 特に不安に感じることを尋ねると、「給与、年金、蓄え」が33・7%とやはり最多。世帯主の年齢別に見ても、八十一歳以上は「健康」を挙げる人が一番多かったが、他の各年代はお金について最も不安を感じている。

 回答者の七割が六十歳以上で、八割が世帯年収二百万円未満とあって、悩みは切実といえる。

<自由回答>

鉄のドアに孤独感    鉄のドアで外部と遮断されるということは心理的に孤独感が発生、内部にとじこもりがちになる。仮設住宅は長屋感覚で付き合いがあり良かった。(男性、70歳)

▼都心まで交通費高く    北区から中央区まで通院するのが交通費も高く遠いので疲れる。行ける間は運動になると思って通っている。環境も良く、空気が良いので92歳の姉はここが良いと考えている。家賃も安くしてもらい感謝している。(女性、79歳)

▼隣に住む人はだれ    コンクリートの中で居住したことはなかった。隣にどんな人が入居しているのかまったく分からない。治安も相当悪く、常に火のついたタバコまでぽい捨てする。入居して丸五年、いまだに嫌で仕方がない。(男性、71歳)

▼前向きに生きたい   震災さえなかったらと今でもよく思う。震災で人生が変わった。いや、狂ったと思う。でも振り返ってばかりはだめと前向きの姿勢で毎日を送っていこうと思っている。(女性、60歳)

▼通院と買い物で疲れ   主人は八十一歳。震災で十六時間ぶりに救急隊員に助けてもらったが今も通院している。私は七十七歳。毎日が通院と買い物で疲れる。(女性、77歳)

  神戸大学 塩崎賢明教授   こまやかなケア体制が必要

 調査結果によると、集会所を利用したり、外出したりするなど元気で積極的な人がいる一方で、震災前の生活を取り戻せない人がかなりいることが分かる。例えば、震災前と現在の団地のどちらが良いかを聞いた設問では、震災前と今がほぼ同じ。どちらともいえないも25・5%いる。人づきあいが減り、寂しく感じたり、無関心になったりしている。人間関係を含めた社会環境や地域環境が失われたことが大きな影響を与えている。

 三年前に研究室で一カ所を除き同じ団地を対象に調査したが、傾向は変わらなかった。時間がたっても回復は難しいということだろう。

 必要な施策は二種類ある。一つはよりこまやかなケア体制の整備や友達づくりの支援だ。見守りの質も問われている。もう一つは、街中や元住んでいた地域への住み替えの仕掛けづくり。復興住宅や借り上げ民間住宅への転居を考えられないか。

 入居者は高齢者、単身者、低所得層が集中しており、震災から十年たっても何も変わらない。根本的に考え直し、多様な対策を進めなければ解決しない。

 新潟県中越地震の被災地では、集落に配慮し、仮設住宅への入居も進められた。今後、災害の際には、都会でもコミュニティーを大切にした再建を考えていくことが重要だ。

 
〈回答者プロフィール〉

年齢をみると七十歳代がトップ。家族構成では単身が六割を占める。職業では無職が最多、79・3%が世帯年収二百万円未満となっている。入居後に亡くなった家族がいる世帯は11・6%で、震災で死亡した家族がいる世帯(7・6%)よりも多い。

 震災前の住まいは共同住宅56・3%、一戸建て24・2%、長屋17・0%。民間借家が66・6%で最も多く、「土地所有、持ち家」(11・9%)「借地持ち家」(11・0%)と続く。土地、家屋を所有していなかった人が八割を占める。

 

<調査の概要>

 復興住宅アンケート調査は、震災10年を前に、暮らしの課題を探るため、神戸新聞と神戸大学工学部の塩崎賢明教授(都市計画)研究室が実施。2004年9月10日から20日にかけて神戸市内の31団地・1639世帯に用紙を配布、1004世帯(回収率61.3%)から回答を得た。

 団地は、同市中央区のHAT神戸脇の浜など大規模5カ所、中規模6カ所、小規模20カ所。  

過去には、1998年に合同で、2001年に同研究室単独で、それぞれアンケート調査を実施している。

 
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