防災アンケート詳報(下)
(掲載日:2004/09/02)
 東南海・南海地震の防災対策推進地域に指定されている兵庫県内二十四市町を対象に、神戸新聞社が行ったアンケート調査で、避難所となる学校の耐震化が今も四割にとどまっていることが分かった。また、食料など備蓄状況は自治体によって大きな差があり、淡路地域での遅れが目立つことも明らかになった。
◆学校施設耐震化
進む2極化/財政難、行政合併で遅滞も

 災害時には避難所になるなど地域の防災拠点に位置付けられる公立小中学校。耐震診断の対象となる一九八一年以前に建てられた校舎や体育館は、推進地域二十四市町で計二千七百五十二棟に上る。

 このうち、四月一日現在で診断済みは千五百七十三棟(57%)。本年度末見込みで千九百七十四棟(72%)まで増える。揖保郡御津町、津名郡津名町では耐震診断さえ未着手だ。

 耐震補強をした施設と、新耐震基準に基づき八二年以降に建てられた施設数を合わせた耐震化率は、二十四市町全体で42%。本年度末で43%(五百七十三棟)と微増の見込みだが、まだ半数にも達しない。

 市町別では、進ちょく状況の二極化は明らか。津名郡淡路町が100%に達したほか、三原郡三原町や津名郡東浦町など淡路地域の五町で本年度末に七割を超え、順調に耐震化を進める。

 一方、最も低いのは尼崎市の11%。相生市(26%)や神戸市(40%)はすでに診断を終えた施設のうち、大半の施設で耐震性に「問題あり」と判明した。しかし、将来の耐震化のめどは立っていない。

 具体的に耐震化計画を定めているのは八市町。来年一月に合併する三原郡四町は二〇〇六年度までにすべて完了する予定だが、これは例外。推進地域の自治体の多くが厳しい財政事情に加え、行政合併を控えており、半数に当たる十二市町で「計画中」としている。

◆災害対策本部
9市町が耐震化/「計画ない」37.5%

 大規模災害時に災害対策本部が設置される市役所や町役場で、施設の耐震性が確保できているのは九市町。

 未耐震化施設について「耐震化計画がある」のは五市町。「計画なし」は九市町を数えた。芦屋市は阪神・淡路大震災で一部損壊だった市役所の補強工事を行ったが、耐震性について「分からない」としている。

 災対本部が被災することを想定して「代替施設をもっている」のは高砂、赤穂市など八市町。「通信手段のみ代替施設がある」のは神戸、姫路市など四市町だった。

 南海地震の津波で町役場の浸水が確実とされる三原郡南淡町は、代替施設はないが、「データのバックアップ機能がある」と答えた。

 「バックアップ機能はない」と答えた十市町のうち、洲本市と津名郡津名、淡路、東浦町の四市町は、将来の耐震化計画もないという状況だ。

◆備蓄物資
予算と保管がネック/29%「不十分」と回答

 備蓄物資の状況は自治体によって大きく異なる。洲本市や津名郡東浦町は全く備蓄がなく、乾パン、乾燥米、飲料水といった基本的な食料備蓄も津名郡一宮、五色町、三原郡三原町など六町が持っていなかった。洲本市は「計画を作り、順次、整備することを検討」としている。

 総じて郡部は低調だが、人口約八千人の飾磨郡家島町は乾パン約一万三千食分、乾燥米七百食分、高齢者向け食料四百五十食分を備蓄していた。

 「十分だと思うか」の問いに、「十分」としたのは津名郡北淡町だけだった。「不十分」が29%、「十分ではないが、流通業者と災害協定を結んでいる」が63%で、流通業者と協定を結ぶことで費用負担を抑えようとしている。備蓄不足の理由に63%が「予算が足りない」、38%が「保管場所がない」と答えた。

◆高齢者・ 障害者対策
迅速な情報提供に課題

 福井、新潟の水害では高齢者・障害者への情報伝達のあり方が問題となった。アンケートでも「高齢者・障害者への地震・津波情報の提供手段」(複数回答)について、「行政職員や自治会役員らが直接出向く」が54%と最も多く、「一般テレビ・ラジオ」「電話」がともに33%、「ケーブルテレビ(文字放送)」が29%と回答。今年の豪雨災害のように一気に水位が上がるケースや、迅速な情報伝達が必要な津波に対応できるか、疑問の残る結果となった。

 安否確認をするのは「民生児童委員」71%、「自主防災組織」67%、「市・町職員」58%。だれが行うのか「決めていない」は加古川、洲本市、加古郡播磨町、三原郡南淡町だった。

 災害弱者用の避難所開設を防災マニュアルなどで定めている自治体は42%で、阪神間三市と神戸、明石、姫路、赤穂市、津名郡五色町、三原郡三原町。弱者対応訓練を実施しているのは21%に過ぎなかった。

◆ハザードマップ
神戸市は住民参加型

 住民と行政が一緒になって津波ハザードマップを作成したのは神戸市だけだった。浸水が予想される地域でつくっており、その地域内で全戸配布している。

 住民参加型によるハザードマップ作成には、住民が危険個所や避難経路、避難場所をあらためて確認できる利点があり、80%の自治体が実施を検討している。「作成の予定なし」と回答したのは四自治体だった。

◆自由意見から
財政援助を/連携構築を 国、県に要望続々

 国、県への要望を尋ねたところ、「公共施設の耐震化に財政援助を」(尼崎市)「東海地震防災対策並みの財政的支援を」(姫路市)など、財政支援を求める声が相次いだ。

 三原郡南淡町は南海地震で約六メートルの津波が押し寄せ、県内では最も大きな被害が予想される。同町は「現在の備蓄では十分な避難者収容対策ができない」とし、ホテルや旅館など宿泊施設と災害時の避難者受け入れ協定を結んでおり、災害救助法に基づいて宿泊費用を弁償する制度を求める。ホテルは町の雇用の場にもなっていることから、仮設住宅の建設よりもホテルを避難所として利用することで、「雇用確保と即時避難者収容を可能にする」としている。

 神戸市は「東南海・南海地震など広域災害では、一市および近隣市応援だけでは限界がある」とし、「広域応援・連携の態勢を早期につくってほしい」と呼びかける。

 また、国、県への要望とともに、津波への独自対策も尋ねた。

 尼崎市は警報発令を住民に周知するため、国道43号以南にある工場などに、サイレンを鳴らしてもらうよう働きかけている。担当者は「今後一、二年で態勢を整えたい」と話している。

 明石市は海岸沿いに防災行政無線を整備し、観光客らにも直接、津波警戒を呼びかけられるようにした。西宮市は浄水器二十台を保有し、「雨水、河川、井戸水などを一時間あたり一トン、飲料水にできる」としている。

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