千歳地区センターや千歳公園が今春完成し、同地区を中心にした鷹取東第二地区の震災復興土地区画整理事業は二〇〇五年度中にほぼ終わる。しかし、地域には更地が目立ち、この町に戻れた被災者は半数くらいといわれる。「震災前のような温かみのある町に」と住民らは願い、再生への道のりはまだ途上だ。
鷹取東第二地区は震災で約九割の建物が被害を受けた。世帯の六割以上が借地・借家人だったという。連合まちづくり協議会は借家人らの住宅確保を優先課題として神戸市に要望。住民が優先入居できる受け皿住宅(市営住宅)約百戸が建った。
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| 1995 震災直後の千歳地区。大破したり火災で焼けた建物のがれきが地域を覆う=1995年1月20日 |
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| 2000 重機を使って進められる更地の整備=2000年12月30日 |
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| 2004 区画整理で誕生した幅の広い道路と、更地が目立つ現在の地域=2004年12月30日 |
それでも、協議会の鍋山嘉次会長(79)は「借地・借家人の一部しか、震災前に暮らしていた場所に戻れなかった」と話す。事業の対象となった地域(長田区の一部を含む)の人口は震災前千九百四十一世帯四千三百二十四人だったのが、昨年十二月一日現在で千三百六世帯二千六百六十二人と約六割にとどまる。最近、転居してきた新住民が相当含まれており、実際に戻れた住民の割合はさらに低い。
「区画整理に時間がかかり、その間に新しい居住地に生活基盤ができた。帰りたくても断念せざるを得なくなった」という声が上がる。鍋山さん自身も借地人。現在、同市垂水区内で暮らし、千歳に戻ることは考えていない。
この地域にかかわってきたコンサルタントの浅野弥三一さんは「被災者には早く落ち着きたいという気持ちがあった。受け皿住宅の建設方針など、もっと早く事業の見通しを示せれば、借地・借家人が戻ってきたのではないか」と振り返る。
最近、地区内に戸建て住宅や分譲マンションが少しずつだが、建ち始めた。鍋山さんは町に活気が出る、と歓迎する一方で、コミュニティーの形成を懸念する。「人間同士の温かみをつくるには時間がかかる。震災の教訓はコミュニティーを守ること。大きな災害があった時、コミュニティーを壊さないような復興施策が必要だ」。この十年をかみ締めながらそう語った。
-千歳地区(鷹取東第二地区)の復興土地区画整理事業-
面積は19.7ヘクタール。震災では、1196棟のうち全壊1034、半壊49に上った。1997年3月に事業計画を決定。減歩率は9%で、1万平方メートルの千歳公園や2500平方メートルの戸崎通公園を整備し、区画道路(幅5―14メートル)や歩行者専用道路を設ける。同年9月から仮換地指定を始め、昨年12月末時点で仮換地率は89%、2005年度中に100%を達成する予定で、事業の完了は2006年度を目指す。総事業費361億円。
―大学の調査から 更地の3割 今も残る
震災から十年がたち、復興土地区画整理事業が終盤を迎えた神戸市須磨区の千歳地区。しかし、住まい、事業所の復興の遅れが目立つ。奈良大地理学科の碓井照子教授らの調査によると、被災によってできた更地のうち、今も約三割が残っている。同様に同地区などを調査する神戸芸術工科大大学院芸術工学専攻主任の斉木崇人教授は「道路拡幅で敷地が狭くなり、土地利用が難しくなったのでは」と指摘している。 碓井教授は学生とともに一九九五年四月から半年ごとに、被災地のほぼ全域で更地や建物などの調査を続ける。 千歳地区では、約千二百世帯の住む建物が更地に変わった。九五年十月には、うち81%が更地(駐車場を含む)だった。本建築の建物はわずかで、個人が建てたプレハブ、コンテナなどの仮設住宅の方が多かった。 二〇〇四年十月の調査でも、更地は31%残る。仮設はほとんどなくなったが、更地に建てられた本建築の建物の割合は55%にとどまり、道路など公共用地が拡大した。また、区画整理の減歩で少なくなった土地を有効活用するため、三階建て住宅などが増加。長屋や中小事業所などが密集していた震災前とは、まちの姿が一変した。 碓井教授は「千歳地区は震災前、職住一体の地域だったが、ケミカルシューズなどの地場産業の苦境で土地を離れた人も少なくないはず」と分析。「賃貸住宅などの地主は、需要の減少や自身の高齢化から再建を断念し、土地の低価格化が続く中、売るにも売れない状況」とし、神戸市東部との「東西格差」が広がっていると指摘する。 一方、斉木教授らは、須磨区などの五地区で復興状況を定点調査。千歳地区の大池町一丁目では、区画整理が進み始めた二〇〇〇年は62%が空き地だった。事業による制限がなく、落ち着いてきた周辺に比べて復興状況に大きな差が出ていた。その後も、道路建設のたびに家が解体されて空き地ができ、埋まらないケースが多い。小さな駐車場として利用される場合もある。
斉木教授は「細分化されて利用が難しくなった土地を統合し、活用を促す方法を考える必要がある」と話している。
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再建の状況に個人差
「街並みは美しくなったが、空き地が多い。早く地主が戻り、再建してほしい。この10年で生活再建の個人差がくっきりと表れてきているように思う」(須磨区・50代男性)
住民本位の視点欠く
「行政の震災復興の取り組み方が住民本位でやっていない。(区画整理事業の)時間がかかりすぎ。行政はわれわれの要望に対し、お金がないから推し進められないと言う。怒りを感じる」(須磨区・60代男性)
再建できたが借金苦
「同じ所に再建できたが借金は減りません。仕事が減っており、今後どうなるかわからない。大変です」(須磨区・40代男性)
個人切り捨てないで
「行政よりも民間の助け合いの中、立ちあがっていけたように思う。家族、ご近所の力であの苦しい中、ここまでこられた。国、県は個人を守り、切り捨てないで」(須磨区・40代女性)
活気が失われている
「立派なマンションが増え、街並みも整ってきたように思うが、不思議と活気は失われているよう。人々の表情もどこか暗い。不景気が大きな原因だ」(須磨区・40代男性)
疑問感じる町づくり
「風景が変わった。高いビルが多くできたが、すべて必要だったのか。商業用スペースにはたくさんの空きがある。児童館や集会所など人が集まれる場所は増えたのか。空き地はどうするのだろう。計画を立てた町づくりだったのか疑問」(須磨区・30代女性)
心の傷は消えない
「被災者の心の傷、後遺症は消えない。私の場合でも、ベランダで洗濯物を干していると、『今、地震が起きたらどうしよう』と考え、恐ろしくなる。地震で圧死しないか、いつも恐怖心がある」(須磨区・60代女性)
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