復興住宅、高齢化加速の一途

   2006/01/17

 阪神・淡路大震災後、兵庫県内では二万五千四百二十一戸の災害復興公営住宅が整備された。震災から丸十一年を迎え、復興住宅は高齢化が一層進み、住民同士の支え合いが難しくなるなどの課題に直面している。住民らは新たな絆(きずな)を求めて、高齢世帯生活援助員(SCS)や生活援助員(LSA)など公的な支援者やボランティアらと、終(つい)の住みかのコミュニティーづくりを模索している。(網 麻子)

支え合う仲間づくり模索

映写会の休憩時間に体操する入居者ら。貴重な仲間づくりの場にもなっている=神戸市中央区中山手通7、県営神戸大倉山高層住宅・コミュニティプラザ(撮影・水田日出穂)

 「美空ひばりは、いいねえ」

 スクリーンの前でお年寄りたちが話し、笑う。神戸市中央区の復興住宅「県営神戸大倉山高層住宅」(五百十戸)のコミュニティプラザ集会室。この部屋で月二回開かれる映写会は人気のイベントで、毎回四十人前後が集まる。

 同住宅は六十五歳以上の入居者が59・3%を占め、高齢化率は復興住宅の中でも高い。SCS、LSA、見守り推進員の計八人のスタッフが入居者の暮らしを支える。

 映写会は、支援スタッフらの発案で二〇〇四年夏に始まった。スタッフらが上映作品を決め、住民有志の「どんぐりころころクラブ」が準備を担当、地域のボランティアグループが上映を行う形で続いている。韓国の人気ドラマ「冬のソナタ」も上映した。

 「閉じこもりを防ぐ効果に加え、友達づくりの機会にもなっている。映写会をきっかけに住民が環境整備などの活動も始めた」とLSAの田村雄吉さん(63)。

 映写会は軌道に乗り、団地の活性化につながっている。一方で同住宅は多様な課題を抱える。

 入居開始直後に発足した自治会が運営問題などでなくなったため、現在は住民らでつくる管理委員会が集金や共用部分の維持管理を行う。吉田寮爾委員長(60)は「みんな年を取り、感謝はされるが協力する人が減った。認知症も増えた。毎日さまざまな相談がある」と話す。それでも「震災で多くの人に世話になったお返しのつもりでやっている。もっと、閉じこもりを防ぐ対策を考えていきたい」と前向きだ。

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 神戸市の調査によると、市内二百二団地の半数は自治会がない。市高齢福祉課の岡本和久係長は「震災から十年が過ぎ、高齢化で担い手が減って自治会がなくなるなど、コミュニティーづくりが進まない。つながりをつくる支援をしていきたい」と話す。市が〇四年度から始めたコミュニティサポートグループ育成支援事業の対象は約二百。大倉山の映写会もその一つだ。

 市や県は、〇五年度からSCSが見守りに加え集団も支援するよう役割も見直した。

 ポスト震災十年。復興住宅では、見守りに加えコミュニティーづくり支援の工夫と充実が求められている。


新潟県中越地震

被災者の意向に沿って建設

 阪神・淡路大震災以来の震度7を記録した二〇〇四年十月の新潟県中越地震。同県内で計画されている被災者向けの災害公営住宅三百二戸(〇五年十一月現在)のうち、長岡市は最多の百二十六戸を建設する。同市は、阪神・淡路の教訓から、集落のコミュニティー再生に配慮することや、全壊世帯のうち入居希望者分だけ住宅を用意することなどを基本方針にしている。

 同市は〇四年、全壊世帯すべての意向を調査。〇五年春には五市町村と合併したため、再び意向を調べて建設戸数を決めた。公営住宅は市内四カ所に建設。三カ所は集合住宅だが、七日町には二戸が一軒になった平屋を三棟建てる。入居先についても希望を調べて調整するなど、きめ細かな対応をとった。

 同市に編入された旧山古志村は、被害が大きかったため整備計画が立っておらず、六集落が集団移転などのため集落再生計画を策定中。同市は集団移転先などに、自力再建が難しい高齢者のために戸建ての公営住宅を検討している。従来のコミュニティーを維持してもらうのが狙いという。

 同市建築住宅課の安部和則課長は「今後も住民の意向に沿って、まちにあう災害公営住宅を整備していきたい」と話している。


復興フォローアップ委員会副座長・関西大教授 松原 一郎氏に聞く

自立支援の拠点開設

 県は、被災地で残された課題と対策を検証する復興フォローアップ委員会の中間報告を踏まえ、新年度から復興住宅に高齢者の自立支援拠点を開設する。同委員会副座長の松原一郎・関西大教授(社会福祉学)に、報告で自立支援拠点を求めた背景や狙いを聞いた。

 ―震災から十一年が過ぎ、復興住宅を特別扱いすることに批判もある

 国や自治体の復興施策によって、超高齢社会の復興住宅が生まれた。高齢化率、単身高齢世帯率は年々上昇している。そこをどういうふうに住みやすい町にするか、フォローしていくべきではないか。

 ―なぜ、今、拠点開設か

 抽選によって入居したため仲間づくりや支え合いは難しいままになっている。自治会役員が高齢のため自身のケアが必要になったり、入院や死亡するなど、世話をする人たちが減っている。「後継者」は育ちにくいようだ。これまでの見守りに加え、コミュニティーづくりへの支援があらためて必要になっている。

 ―どんな活動が必要とされているのか

 住民同士のつながりをつくり、社会的な孤立を防ぐことが最大の狙いになる。LSAが配置されていない住宅で、社会福祉法人や特定非営利活動法人のスタッフが、常駐で見守りをしながら、会食や趣味の講座など住民が集う多様なサービスを提供する。住民の相談に応じ、自治会もサポートする。

 地域でも、高齢化が進めば、コミュニティーづくりへの支援が必要になる。自立支援拠点は、社会的孤立を防ぐ先駆的な仕組みと考えている。


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