(掲載日:2002/01/12)
 七年近くになる復興のまちづくり。住民と行政の出会いは不幸な形で始まった。復興土地区画整理事業の都市計画決定は建築制限期間が切れる日に強行され、「被災者不在」との強い批判を浴びた。貝原俊民知事=当時=は「決定を修正すべきとなれば柔軟に対応する」と表明。不満が渦巻く中、住民参加を打ち出したまちづくりが始まった。事業が終わりに近づいた今、まちには住民提案による公園やせせらぎができ、真新しい街区が誕生している。しかし、本社の被災者アンケート調査で「住みやすくなった」という人は少数派だった。事業が掛かる十八地区の現況とともに、住民とまちづくりの関係を追った。

生まれ変わる街区 仮換地8割超える

 阪神・淡路大震災の被災地四市一町が事業主体となる復興土地区画整理事業は、十八地区全体の仮換地指定率が八割を超えた。鷹取東第一地区を皮切りに、この一年で三地区が事業完了(換地処分)し、二地区が指定率一〇〇%に達した。三月末までに一地区、二〇〇二年度中に五地区で事業が完了する見込み。難航していた富島地区も急ピッチで進み始め、各地区とも最終段階に差し掛かっている。

 市町別の概要は、神戸市=十一地区、一四三・二ヘクタール(仮換地指定率83%)▽芦屋市=三地区、三四・四ヘクタール(91%)▽西宮市=二地区、四一・七ヘクタール(96%)▽尼崎市=一地区、一三・七ヘクタール(86%)▽北淡町=一地区、二〇・九ヘクタール(40%)。全十八地区では約二五四ヘクタール、指定率は83%。事業費は計約四千五十二億円。

 事業完了したのが、鷹取東第一と六甲道駅西、森具の三地区。仮換地指定が終わったのが、芦屋中央など二地区となっている。芦屋中央は三月末までに事業も完了する。

 三月末までに仮換地指定率が一〇〇%に達するのが、松本など三地区。芦屋西部第一も三月末を目指している。

 加えて、来年三月末までには、森南第一など四、五地区が事業完了する見込み。すでに完了の地区と合わせて七、八地区で区画整理が終わる。仮換地は計十四地区で指定を終え、四地区(鷹取東第二、新長田駅北、森南第三、富島)を残すのみとなる。

 各地区では、まちづくり協議会を中心に、都市計画で決まった中身を具体的に詰めたり、計画を修正するまちづくり提案に取り組んだ。その結果、森南地区では、住民が猛反発した当初計画の十七メートル道路がなくなり、減歩率も2・5%に抑えられた。

 また、住民らが意見を出し合って道路・公園の整備内容を練り上げていくワークショップなども開かれた。松本地区では、歩道幅を広げて車道との間に小川を流す「せせらぎ」が一部完成。住民が積極的に管理に取り組むなどしている。


自力復興の事業外地区 「制約なく再建早い」 「整備には差」

 「区画整理事業の対象にならなくてよかった」。神戸市東灘区の深江地区まちづくり協議会事務局長、佐野末夫さん(65)はそう断言する。

 「住民から必要だという声はほとんどなかった。自分たちの力で、ここまで復興できたことを住民は誇っていいのではないか。区画整理事業は、仮換地までに時間がかかり過ぎるのが難点だ」

 一方、同市長田区の野田北部地区の住民の反応は少し違っている。同地区の十二街区のうち二街区は「鷹取東第一地区」に組み込まれ、区画整理事業が実施された。

 野田北部地区のまちづくり協議会(浅山三郎会長)は、震災前から住民によるまちづくりを推進。区画整理の予備知識もあり、直後から二街区を支援するとともに、事業の対象にならなかった残り十街区のまちづくりに取り組んできた。

 同協議会で事業推進部長を務める河合節二さん(40)も、区画整理で自宅再建に時間がかかっている点に触れ、「事業外地区から見ると、対象にならなくてよかった、というのが多くの声だろう」とする。しかし、「いま町並みを比べると、事業地区と事業外地区の整備の差は明らか。事業地区は制約があり、苦労した分、メリットも大きい」とも話している。


住民参加のまちづくり 自発的な活動を/解散する「まち協」も

 十七メートル道路をめぐって、行政への不信感が噴出した神戸市東灘区・森南地区。反発に配慮した市は、十七メートル道路を棚上げし、その後、住民提案を受けて計画を変更した。

 地区内にできた三つのまちづくり協議会のうちの一つ、森南第一地区の「森南町一丁目まちづくり協議会」の奥井明会長は、住民参加のまちづくりを二つの意味で考える。一つは「今そこに住んでいる人が快適なまちか」、もう一つは「三十年後の人に託せるまちを」。両立の難しさを感じながらも、継続的なまちづくりへの取り組みを重視している。

 同協議会は先月、復興区画整理の事業地区としては初めて、まちづくり協定を市と結んだ。パチンコ店の排除やファミリー形式住宅の設置に努めることなどのほか、ごみ出しなど生活マナーを守るといったソフト面のルールも盛り込まれている。奥井会長は「入り口は区画整理だったが、良いまちをつくるため行政とも目標を共有し、若者主体のまちづくりを実現させたい」と話す。

 塩崎賢明・神戸大教授(都市計画)は「事業地区のまち協は、区画整理のためにできたまち協だったが、住民が主体的に考え、自立して取り組むまち協に変身を遂げつつある」と評価。「事業のためにまち協と付き合う、という姿勢から行政も脱皮するべきだ。まちづくりの課題は、地域ごとに環境から文化、福祉、経済など多岐にわたっている。それをお手伝いできる態勢を整えなければ」とする。

 一方、ほとんどの地区で事業が大詰めを迎える中、活動が停滞するまち協も少なくない。事実上の休止状態や、「後は個人の問題」として解散したまち協もある。

 塩崎教授は「事業地区のまち協の性格を考えれば、活動が下火になるのはある程度当然。そこの役員や住民を批判できない」と指摘。「まち協をつくらせた行政は、まち協の自発的な変身を応援しなければならない」と話している。


 仮換地 自治体が事業主体となる土地区画整理事業は、都市計画、事業計画の決定を経て、換地作業に移る。実際には、施行者と個々の地権者との交渉で、土地の移転先を割り当て、仮換地として指定する。その際、土地の削減具合を示す減歩と、建物の移転補償費なども決まる。この時点で、地権者は新しい土地に建物を再建することができる。地区内で仮換地された面積の割合が仮換地指定率。指定率が一〇〇%に達すると、換地計画をまとめ、換地処分(事業の完了)。土地登記なども改める。


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