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高層 暮らし孤立化/収入 健康にも不安
◆住民の満足度 …「終のすみか」6割
住宅に対する全般的な満足度では、「普通」を選んだ人が最も多いが、「とても満足」「やや満足」も、合わせて35・3%を占めた。 ただ、「入居したばかりのときはどう思っていたか」との設問では、「とても満足」「やや満足」が計40%を超えており、満足度はわずかながら下がっている。 今後については、「住み続ける」が62・3%に達し、現在の住宅を終(つい)のすみかと考えている人が多い。 しかし、住宅への入居理由(複数回答)では、「希望した公営住宅に入居できなかった」(41・8%)、「ほかに行くところがなかった」(41・4%)が最も多く、積極的に今の住宅を選んだ人は少ない。 「住み続ける」とした人の中には、「年なので替わりたくても替われない」「住まざるを得ない」などの消極的理由を記す人も目立った。 ◆住宅に対する評価 …設備と家賃には満足 「住んでよかったと思う点」は、部屋の設備などのハード面と「家賃の安さ」が上位に挙がった。「段差がないなど、高齢者が安心できる設計」を選んだ人は約半数に達している。 しかし、高層住宅ゆえの不安は強い。「住宅の嫌な点」では、「高いところに住んでいるので、災害時の避難が心配」「高いところに住んでいるので、外出が不便」がいずれも上位に上がった。 また、周辺環境やコミュニティーへの不満が強いのも特徴。最寄りの駅までバスを利用しなければならず、バス停と住宅の間に急な坂道がある立地のため、「買い物が不便」は四割近くに達した。「住民同士のつながりが薄い」も二割を超え、近所付き合いに課題を感じている人が目立つ。
◆バス・地下鉄の敬老パス …通院にも頼みの綱
神戸市内の七十歳以上に交付される市バス、市営地下鉄の無料パス「敬老優待乗車証」は、63・4%が持っていた。持っている人のうち「よく使う」「たまに使う」が計90・2%に達した。ベルデ名谷は、スーパーや最寄り駅に行くのにバスが必要で、入居者はパスを「頼みの綱」にしていることが分かる。 パスをめぐっては、高齢者急増で財政を圧迫する―として、市が今後の制度のあり方を検討する懇話会を設置した。自由回答欄には「パスがなくなれば医者にも行けない。取り上げないで」(女性、85歳)などの訴えがあった。 また、介護保険の福祉サービスはほぼ四人に一人が利用。内容はホームヘルパーとデイサービスが九割を占めた。震災から十二年近くが過ぎ、入居者の心身は衰えが進んでいる。 ◆外出の傾向は …楽しみ「テレビ、ラジオ」
外出傾向を調べたところ、買い物のために出掛ける頻度は「週に三、四回」「週一、二回」を合わせると六割超に上った。 「普段の楽しみ」を複数回答で尋ねた設問でも、買い物は二番目に多い30・8%で、暮らしの中で重要な部分を占める。 「家族や親せき、友人に会うための外出」は、「月一、二回」が最多で39・0%だった。 「通院のための外出」は「月一、二回」が最多の44・9%。「趣味のための外出」は、「月一、二回」に、「皆無」を含むとみられる「その他」を加えると半数近くになった。 買い物を除けば外出の機会は少ないようだ。 また、普段の楽しみ(複数回答)は、「テレビ・ラジオ」が最多で48・3%。外出傾向と合わせて見ると、社会的孤立の傾向がうかがえる。 ◆バス停までの急な坂道 …休み休み ようやく 住宅とバス停の間には、急な坂道がある。荷物を途中何度も置いて休憩しながら上る高齢者が目立つ。自由回答では、「坂道がつらい」との声が多く寄せられた。 無職の女性(80)は「手術した右ひざ、左ひざ、腰の痛みのため、自宅にたどり着くまでがとてもつらい」と訴えた。別の無職の女性(72)も「だんだん外出がきつい」と記した。気管支や心臓などの持病で、坂道が負担になる人も少なくない。 また、「動く歩道ができる触れ込みだったのに」(女性、69歳)との嘆きもあった。 無職の男性(62)は「腰の曲がった高齢者がつえをつき、坂道を歩く姿を見ると何ともいえない気持ちになる。車で移動する人にはいいが、店も少なく、高齢者に住みよいところには思えない」とつづっている。 ◆若年層も不満 …学校まで距離遠く 回答者のうち六十五歳未満は25・3%。高齢者とは異なる点で住宅に不満を持っており、復興施策への批判もにじむ。 幼稚園児と小中学生の子ども四人がいる無職の女性(32)は「幼稚園、中学校までの距離が遠い」と記した。無職の男性(51)は「大阪近くの会社への就職は、バスと地下鉄で交通費が高くなるため、それだけでアウト」と嘆く。 また、パートの女性は、地震で自宅が半壊。夫や子どもと各地を転々とし、子どもが不登校になるなど苦労したという。昨年、この住宅に入居。「ようやく復興の始まりと思える。若いから生活再建できると後回しになった感じは今もぬぐえない。震災に遭わなければ違った人生だったかもしれない」とつづる。 ◆自由回答欄の声から …年金収入100万円弱/元の住所には戻れず 【死んでいくほかない】 【震災がなかったら】 【一人暮らしは不安】 【本当に寂しい】 【居心地よく感謝】 【駐車場でもめ事】 ◆回答者の横顔 …60歳以上が7割超 最多は1人世帯
年齢は七十代がトップで、六十歳以上が七割を超えた。世帯人数では「一人」が61・3%で最多。職業は「無職」が71・6%を占めた。世帯の収入は、三百万円未満が85・2%に上った。 震災前の居住地は神戸市長田区(27・1%)が最も多く、同市西部からの入居者が約七割に上る。震災前の住宅は「文化住宅」(28・4%)、「一戸建て」(27・4%)が多く、所有形態は「賃貸」と「借地・持ち家」を合わせて73・6%だった。震災による住宅の被害は「全壊・全焼」が66・8%を占めた。
塩崎賢明・神戸大工学部教授(住宅政策) 入居者は、建物の物理的な性能については評価している。しかし、それは、自分が住んでいる部屋の内側に対する満足度の高さだ。大規模高層住宅の問題点は浮き彫りになっている。 震災前の暮らしでは、買い物に出掛けたときなどに、いつも見る顔があったり、ちょっとした言葉を交わす人がいたりして、それが一人ひとりの生活の重要な部分を構成していた。しかし、大規模高層住宅ではそういう関係が消えてしまい、閉じこもりがちになる。「普段の楽しみ」で最も多いのが「テレビ・ラジオ」という結果を見ても、高齢者の孤立傾向が表れている。 過去に何度か復興住宅の調査をしてきたが、入居から年月がたって生活が改善しているという印象がない。団地内の集会所など、すぐ近くに出て行くのにもかなりの決心を要する高齢者が多くなっていることが分かる。身体的な衰えと、坂道などの物理的障壁が重なり、「住民同士の付き合いが増えない」という状況になっているのだろう。 大規模な集合住宅では、住む棟が違えば交流は少ない。各棟の空き住戸を交流の場として積極的に活用してはどうか。今後、集合住宅を計画する際には、この調査で表れているような問題を考え、しっかりと反映させていく必要がある。 |
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