日々小論

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 一つの博物館が先月末で閉館した。「リバティおおさか」として知られた大阪市浪速区の大阪人権博物館。人権問題を考える総合博物館として異彩を放ったが、開館35年の今年でいったん幕を閉じることになった。

 市が無償貸与していた市有地からの退去と賃料支払いを求めた訴訟で、明け渡しを条件とする和解が成立したためだ。

 2億円近い賃料を負担する力は、博物館にはない。運営費の大半を大阪府、市の補助金に頼っていたが、それも全廃され、退路を断たれた形である。

 発端は、大阪市長に就任した橋下徹氏が8年前に「展示内容が暗く子どもが夢を持てない」と苦言を呈したことだった。人権運動団体の提唱で開設された経緯から「運動色が強い」との批判があったのは事実だ。

 ただ、抑圧の歴史を直視する博物館は「世界的にも希少な存在」とも評価されてきた。

 被差別部落や在日コリアン、アイヌ民族、沖縄、薬害エイズ、ハンセン病…。歴史や背景は違っても「人権」の横ぐしを通せば見えてくるものがある。

 今ならコロナ禍での医療従事者への差別、SNS上の中傷、黒人差別が展示のテーマになり得る。実現すれば多くの気付きを与えてくれただろう。

 「最後の公開」は5月最終週に行われ、いじめ問題にも焦点を当てた。若者から高齢者まで幅広い世代が詰めかけた。

 政治家が一時の判断でなたを振るう。それだけでは約3万点の貴重な史料が散逸する恐れがある。博物館を公共財として生かす道を探る方が建設的だ。

 橋下氏の盟友で現大阪市長の松井一郎氏は、再開への取り組みを支援する可能性に言及した。「失うもの」の大きさを感じているからではないか。

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