日々小論

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 できるだけ使わないようにしている言葉がある。「奇跡的」や「世界的」、あるいはそれに似た少々大げさな表現は、書いていてちょっと気恥ずかしい。

 若いころ何げなく使って、先輩に注意された。飾っているとすぐ分かる。文章力が身につかない。みんなの関心を集めるのは事実そのもの、と。

 通常国会が閉じた。安倍首相が新型コロナウイルス禍を「100年に1度の危機」と言うわりには、あっさり閉じた。

 振り返れば、首相の言葉が妙に心に残る国会だった。「一気呵成(かせい)」もあった。が、最たるものは「空前絶後」である。

 補正予算を「空前絶後の規模、世界で最大の対策」と胸を張った。ずいぶん力んでいるなと驚いた。

 原稿通りか首相が加えたのか、事情は知らない。政策へのかんばしくない評価を覆したいにしても、ときの首相がここまで力むのはあまり記憶にない。

 先輩の注意と重ねれば、仰々しいと誰もが思うし、国民が求めるのは飾った言葉でなく事実。困っている人への早く、的確な支援に尽きるのに。

 古い話を思い出す。日露戦争での日本海海戦で、連合艦隊が「敵艦見ユ」「之(これ)ヲ撃滅セントス」と有名な電文を打った。

 撃滅。威勢がいいが、当時の軍人はめったに使わなかったと司馬遼太郎さんが「坂の上の雲」に書く。誇大な用語などを使って「浮き立つことをしなかった」からという。

 昭和に入り、普通の軍人用語になった。軍隊という組織の深いところで何かが乱れ始めた、と司馬さんはみる。

 令和の政治と一緒くたにしてはいけない。でも、言葉が力むとき、深いところで何かが動いているのかと、つい考える。

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