日々小論

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 「自粛警察」「コロナ自警団」の風潮と重ね合わせて読まれている本がある。「ファシズムの教室」(大月書店)。甲南大学で10年間続いた特別授業「ファシズムの体験学習」の意義と実践的解説をまとめたものだ。

 著者の文学部教授、田野大輔さんは特別授業の中で「田野帝国」の「田野総統」を宣言し、学生に拍手で賛同させる。忠誠を誓わせる敬礼(右手を斜め上に上げ「ハイル、タノ!」と叫ぶ)を導入。白シャツ・ジーパンを制服に見立て行進を繰り返す。目標に掲げたのは、構内のリア充カップルの排除だ。

 体験学習の狙いは、ファシズムの仕組みと感化力を学ぶところにある。ヤマ場は膝枕の男女を取り囲み「リア充爆発しろ!」と糾弾する場面。拍手で目標達成が宣言されると、集団の一体感と高揚感は頂点に達する。

 戯画化された状況で、学生はカップルはサクラと感づいている。にもかかわらず、心理は集団行動に没入していく。〈最初はリア充役の人がかわいそうに感じたが、授業だから糾弾してもいいんだと思って、途中から楽しくなってしまった〉とある学生はリポートに記した。

 上からの強制と下からの自発性が結びついた時、ファシズムは生まれる。権威への服従が責任回避になり、集団の規範に従うことが正義になる。共通の敵をつくり、感情を発散できると、私たちは簡単に間違ったことをしてしまう。そうなると個人の倫理観は歯止めにならない。

 過去のものでも他国の出来事でもなく、すぐそばにあるもの。「ファシズムは悪である」と教えるだけでは、耐性は獲得できない。沈黙しないこと、流されずに異を唱えること。体験学習は現在実施されていないが、できることはある。

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