日々小論

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 アパルトヘイト(人種隔離)体制下の南アフリカで、日本人は「名誉白人」と呼ばれ、白人並みの待遇を受けた。特別扱いの背景にあったのは日本の経済力への期待である。

 そのあたりのことが、ジャーナリスト松本仁一(じんいち)さんの著書「アパルトヘイトの白人たち」に詳しく紹介されている。驚かされるのが、現地の日本人社会の受け止め方の変化だ。

 1980年ごろまでは白人からの嫌がらせは日常的だった。日本人学校では塀に「ジャップ」と何度も落書きされたらしい。だが、両国間の貿易拡大に伴い、表面的な差別は減っていく。すると、耳を疑う発言が目立つようになったのだという。

 「アパルトヘイトをやめるとこの国は共産主義に侵略される」「名誉白人として恥ずかしくないよう振る舞おう」…。

 白人警官による黒人男性暴行死事件をきっかけにした人種差別への抗議活動が全米で続く。これを踏まえプロ野球楽天のオコエ瑠偉(るい)選手が肌の色を理由に受けたつらい経験を記したツイートが反響を呼んでいる。海の向こうの出来事が対岸の火事でないことを改めて突き付ける。

 人種を序列化するアパルトヘイトは全人類に対する冒涜(ぼうとく)である。にもかかわらずその中で暮らす日本人に芽生えたのは差別する側の視点だった。複雑な感情が浮かぶ一方で、日本が抱える人種差別問題を考えるヒントがあるのでは、とも考える。

 名誉白人の制度は91年まで約30年間続いた。恥ずべき称号だったと言っていい。経済優先の日本は有色人種に過酷な犠牲を強いる体制を陰に陽に支えた。

 こうしたことをきちんと子どもたちに伝えていかねばならない。大人の一人としていま改めてそう思う。

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