日々小論

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 「このままでは閉館せざるを得ません」。先日、日本玩具博物館(姫路市香寺町)の井上重義館長(81)から切実な手紙が届いた。コロナ禍による休館や来館者の激減で、深刻な経営難に陥っているという。

 私設ながら世界有数の玩具コレクションを誇る同館は、1974年の開館以来、入館料収入や館蔵品の貸し出し、通販事業などで年間約3千万円の運営費をまかない、独立採算を保ってきた。しかし今年3~5月の休館で約300万円の減収となり、再開後も客足はまばらだ。

 80~90年代の「箱もの」建設ブームで、公立博物館が全国で急増し先行の民間施設を圧迫した。バブル崩壊後は公私を問わず、経営不振にあえぐ。芸術文化を「不要不急」と軽視してきた日本社会のあり方が、コロナによって今、問われている。

 玩具博物館を訪れた外国人が一様に驚くのは、国や自治体の支援がほとんどないことだ。同様の施設でも、例えば米国のボストン子ども博物館では公教育との連携が進んでおり、館での体験学習がカリキュラムに組み込まれている。スクールバスで子どもらが続々と訪れ、展示に触れて自由に意見を交わす-。なんと豊かな学びだろう。

 60年近い歳月と私財を費やしたコレクションだが、井上さんは私有財産とは考えておらず、社会全体で保存活用されるよう望んでいる。貴重な文化遺産を散逸させることなく、しかと次代へ引き継ぐ道はないものか。

 同館の特筆すべき収蔵品に、阪神・淡路大震災の被災地から救出された節句人形がある。95年からの3年間だけで、その数300件余り。がれきの中から掘り出された人形たちが再び行き場を失うなど、あの震災を体験した一人として耐え難い。

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