日々小論

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 「Go To トラベル」と名付けられた国の事業が22日に始まる。新型コロナウイルスの感染拡大で痛手を受けた観光業界を支援するのが目的だ。限度額の範囲で国内旅行代金の35%が割り引かれる。9月ごろからは、代金の15%に当たるクーポンも配布されるという。

 観光地や宿泊施設にとっては朗報だろう。一方で、首都圏を中心に感染者は再び増加する傾向にあり、警戒する地方には事業開始に対する疑問や不安の声がある。それも当然だ。

 旅行をするなら、いつ、どこからどこへ、どんな行程にするかなど、それぞれに慎重な判断が必要かもしれない。

 もともと旅好きだった日本人にとっては、どこにも行けないという状況そのものがつらい。

 国際日本文化研究センター名誉教授の白幡洋三郎さんの著書「旅行ノススメ」によると、例えば伊勢参詣は鎌倉時代に武士にも広がり、江戸時代にはきわめて盛んになった。当時、東海道を見たドイツ人は往来する人の多さに驚いたという。

 だが旅行を楽しむ感覚が大衆化したのは意外に新しく、昭和になってからなのだそうだ。

 戦時下、不要不急の旅行はやめよう-というスローガンが出された暗い時代をへて、戦後は新婚旅行、団体旅行、家族旅行が多様化し、庶民が海外旅行に行けるようになった。

 白幡さんは、東独の「個人旅行の自由化」がベルリンの壁崩壊につながったことを挙げて、こう述べる。「旅行は、自分が何であるかを教えてくれるとともに、『私』をこえた社会全体を、そして歴史を、また世界を教えてくれる」

 自由な往来というものが、いかに大切なことか。コロナ禍であらためて痛感している。

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