日々小論

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 「個人の顔が見える新型コロナ報道」という記事を、英国在住のジャーナリスト小林恭子(ぎんこ)さんが月刊誌「新聞研究」7月号に書いている。新型コロナで亡くなった犠牲者について、現地のメディアがどのように伝えているかを紹介している。

 日本と同様、英国でも実名報道が原則とされる。感染者が少ない段階では、新聞や放送は個人の名前や顔を競って報じたそうだ。プライバシー侵害の恐れよりも報道に公的な価値があるとの判断を優先したという。

 今はそうした報道は影を潜めたようで、公共放送BBCや有力紙ガーディアンは、遺族などの同意を得た上で犠牲者の人物像取材に力を入れている。

 BBCは亡くなった医療従事者100人、ガーディアンは多様な職種に及ぶ三百数十人の横顔をホームページで掲載している。生前の熱心な仕事ぶりや子煩悩なパパ、ママの素顔…。

 一つの例を紹介したい。

 28歳の看護師は身重で感染が判明し、入院5日後に亡くなった。写真を見れば気丈そうだけど目が優しい黒人女性だ。女の赤ちゃんは帝王切開で無事に生まれたが、供に過ごす時間もなく逝った。無念だったろう。

 「どの統計数字にも名前や人生、語るべき記憶がある」。ガーディアンの記事はそう訴える。米ニューヨーク・タイムズ紙がコロナ禍の犠牲者千人の実名を一度に掲載したのも、同じ考え方によるものだ。

 名前は個人を識別するだけの記号ではない。一人一人がこの世に生きた証しでもある。英国では、掲載を希望する遺族が個人情報をメディアに提供する仕組みができたという。

 犠牲者を悼む思いを社会で共有する。その意義は、日本でも理解されると思いたい。

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