日々小論

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 「圧倒的に東京問題」。新型コロナウイルス感染者が都内で急増している状況について菅義偉官房長官がこう言い放ち、「むしろ国の問題」と反撃する小池百合子都知事との応酬が話題になっている。

 都合の悪い事象は「地方固有の問題」に矮小(わいしょう)化し、責任を逃れようとするのは時の政権の常とう手段だ。「ああ、国にとっては東京も地方の一つなのか」と妙に納得してしまった。

 東京には、地方のにおいがする。ふいに耳に飛び込んでくる知らない土地の方言、郷土料理の店の豊富さ、各県人会の活発さなどだ。全国の地方出身者が集まる都市だから当然か。

 日本が高度成長にひた走った1960年代は「集団就職」というシステムで、地方の中学卒業生が労働力の「金の卵」として大量に送り込まれた。

 15歳の子どもが親元を離れ、適性も度外視で振り分けられた工場や商店で働きづめに働かされた。近づく東京五輪のつち音も遠くに聞こえるだけ。つらくなったら上野駅に行こう、歌の文句のような合言葉を支えに同郷の仲間と励まし合った-。

 取材したのは25年ほど前になるが、それぞれの半生は当時でも想像を超える過酷さだった。

 「俺なんかでいいの」「何も特別な話はないけど」とはにかみながら、とつとつと語ってくれた人たちの姿が思いだされてならない。70歳を超えた今、コロナ禍にあえぐ街で、どんな暮らしをしているのだろう。

 東京はいずれ単身高齢者や要介護者の急増など、どの地方も経験していない超高齢社会を迎える。かつての卵たちがコロナ禍を生き延び、穏やかに人生を振り返ることのできる「地方のモデル」であってほしい。

 東京への個人的な願いだ。

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