日々小論

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 私の父親は少年航空兵だった。前にも書いたが生前、戦闘機乗りを志したと語っていた。

 B29に挑むつもりだったのか、特攻に志願する決意があったのか。ともあれ17歳の誕生日を前に、岐阜県の陸軍飛行場で父親は終戦を知らされた。

 京都の実家を飛び出して国に命をささげたはずなのに、全てが突然終わる。どう生きればいいか戸惑ったに違いない。

 旧制神戸一中(現神戸高校)の生徒だったSF作家の小松左京さんは動員先の潜水艦工場で8月15日を迎えた。当時14歳の衝撃をこう記す。「私の中で一つの時計がこわれたのである」(「廃墟(はいきょ)の空間文明」)

 物心つくころから「聖戦」で死ぬものと教えられた。人生の価値や意味など考える余裕もなく、「先細りの穴の中をまっしぐらにすすんでいただけ」の日々だったとつづっている。

 だから「終戦」、まして「敗戦」など、「まるっきり理解を絶した」事態だった。

 玉音放送を聞いて負けたのかと尋ねた生徒を、教師が「ばか者、聖戦完遂だ!」とぽかすか殴打する。そんな大人の醜態を目にした小松さんは、戦争を忘れたかのように繁栄を追い求めた「戦後」に違和感を抱く。

 高度経済成長の終盤、小松さんは日本列島が海に沈む「日本沈没」を世に問うた。あの戦禍こそ自ら招いた亡国の危機ではなかったのか。14歳の憤りが書かせた作品に思えてくる。

 私の父親は戦後、苦労して大学に進み、彫刻や絵画に出合って情熱を傾けた。戦争で壊れた人生の「時計」を巻き戻そうとしたのだろう。「二度とだまされないぞ」という痛恨の念が背中を押したに違いない。

 75年前の夏、少年らの胸に去来した心情に思いをはせる。

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