日々小論

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 渡哲也さんが亡くなった後、記事や資料を読み返した。その一つ、7年前に僚紙デイリースポーツに載った記事は、読むだけでちょっと酔った。

 年に2度、シャッターを下ろした東京・新橋のスナックで夜通し歌う。そんな宴(うたげ)をかつて5人の俳優が開いていたという話だ。渡さん、原田芳雄さん、松田優作さん、桃井かおりさん、そしてこのスナックを営む佐藤蛾次郎さんである。

 ~男と女の間には 深くて暗い川がある…の「黒の舟歌」なら、1番を渡さんが演歌風に、2番は原田さんが弾き語りのブルースで、最後にロックで松田さん。こんな調子で、童謡から外国の歌まで延々と続く。

 なんとぜいたくな一夜か。残された秘蔵音源をぜひ聞いてみたいと思いながら、気づく。そろって低音の歌声だなあ、と。

 渋くて奥行きがある。すてきな低音で朝までライブ…なんて、今ならありえない。

 ささきいさおさんが以前、ラジオ番組で嘆いていた。~さらば地球よ…と艶のある低音でアニメ「宇宙戦艦ヤマト」の主題歌を朗々と歌う、あのささきさんである。

 「低音の歌手が減ってきた。いつかなくなるんじゃないか」

 確かに、フランク永井さん、水原弘さん、バーブ佐竹さん…と、懐かしい名前はいくつも挙がる。でも今は…。

 低い声では気分が高まらない。もてるのは中性的な歌声。そんな見方がある。低音域が歌えるプロを育てるには時間がかかるという意見も何かで読んだ。

 「歌は世につれ」という。では低音の歌手が減っていく時代って、何だろう。大衆芸能が薄っぺらになっていくような。

 5人だけの宴を想像しながら、気分がちょっと沈む。

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