日々小論

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 この夏は、例年以上に幅広く戦争体験者の話を聞く機会があった。戦後75年という節目に、コロナ禍がいや応なく促したオンライン化のおかげである。

 「密」を避けるためインターネット上で企画された「戦争体験を聞く会」を探し、沖縄戦やフィリピン戦線、旧満州からの逃避行、シベリア抑留などを生き延びた人たちの証言を手当たり次第聴いてみた。一人一人に想像を絶する体験があった。自分はまだ何も知らないのだ、と痛感する。

 戦後生まれが8割を超え、近づく「体験者不在」の時代に、戦争を知らない世代が記憶を継承できるのか。この質問はどの会でも共通して寄せられた。互いの顔は見えなくても、参加者の多くが同じ危機感を抱えてその場に集っているのを感じる。

 そんな中、「体験者がいなくなるのは誇らしいこと。75年も戦争をしてこなかった証しだから」と語る東京大空襲の体験者、二瓶治代さん(83)=東京都国立市=の言葉にはっとした。

 なぜ、誰もが体験者の不在をこれほど恐れるのか、体験者に任せきりで自分にできることを誰も真剣に考えてこなかったからではないか。そう指摘されたような気がしたからだ。

 でも違った。「伝わらないのは語る側の問題も大きい」と二瓶さん。地元で空襲体験を小学生らに語る活動を続け、若者の研究活動にも協力している。

 心がけているのは、8歳だった自分が見たもの、感じたことをありのままに語り、美談にしないこと。子どもたちには「疑問を持つことを恐れず、本当のことを知ろうとする気持ちを大事にして」と訴えている。

 この国が「戦後」のまま年月を重ねていけるかは、これからの私たちにかかっている。

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