日々小論

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 「あなたのような人は断筆するべきだ」。十数年前、男性読者からお叱りのはがきを受け取った。達筆ぶりから高齢の方ではないかと思う。

 そのころ私は長女(ゼロ歳)の子育て中で、その体験を「大きくなあれ」と題する連載に書いていた。投書主は、育児の「常識」の違いから自分の母親とけんかになったことを紹介した記事に怒っていた。

 母は「赤ちゃんの手足が冷たい」と厚着をさせたがった。しかし育児書には「乳児の冷たい手足は体温調節のため。着せすぎに注意」とある。「抱き癖がつくのはよくない」と考える祖父母世代は多いが、今は「しっかり抱っこして」と教わる。そんな世代ギャップが原因で母とは一時険悪になった。

 はがきには「母親への感謝が足りないからこんな記事しか書けない。人間として未熟」とあった。落ち込んでいたら、今度は別の反応が数十件届いた。「共感した」「私は母と怒鳴り合いになった」。30~70代の全員が女性。激励も多かった。

 このことを思い出したのは、少し前の「ポテサラ論争」がきっかけだ。総菜コーナーで子連れの女性に、高齢男性が「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」と言うのを目撃した、というツイッターの投稿が話題になった。

 「母親ならこうあるべき」との根強い価値観や女性蔑視をそこに感じる、などの意見が飛び交っていた。うなずける。ただ、それだけだろうか。社会学者の水無田気流(みなしたきりう)さんが日経新聞に寄せた文章が目を引いた。

 「人間関係が希薄で孤独な高齢男性は多い。彼らが説教や怒鳴ることでしか他人と接点を持ち得ないなら、その闇は深い」

 つくづく考えさせられる。

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