日々小論

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 王貞治さんが子どものころに愛唱した歌は「故郷(ふるさと)」だった。理由として「東京に生まれて、故郷なるものをもたなかったから」と答えている。

 いまから40年以上前、各界の著名人を対象に行われた「子どものときの愛唱歌」を尋ねるアンケート。その回答例として国語学者の金田一春彦さんが「童謡・唱歌の世界」に書きとめている。1番人気は王さんらの挙げた「故郷」だった。

 ~兎(うさぎ)追いしかの山 小鮒(こぶな)釣りしかの川…で始まるその歌が好きだと言う人はいまも多いが、ウサギを追ったことのない現代人や、フナ釣りを知らない都会人の心をも引きつけるのはどうしてだろう。

 「赤とんぼ」や「椰子(やし)の実」もそう。暖房装置のペチカは知らずとも「ペチカ」を聞くと懐かしさがこみあげる。童謡、唱歌とは不思議である。

 音楽ライブ「童謡サロン」を続ける神戸在住の歌手、深川和美さんが以前語っていた。「童謡には日本の原風景やふるさとを思う心がある」。阪神・淡路大震災の後、童謡が被災者の心に響くのを見て思ったそうだ。「人生を培ってきた歌にこそ前を向かせる力があるのでは」

 確かに、その世界には理想の四季がある。歌ってくれた人がまぶたに浮かぶ。子どもの頃はそれほど好きでなかったとしても、されど童謡は強し。大人になってじわじわ効いてくる。

 新型コロナウイルスのせいで心ふさぐとき、本当はみなで歌を歌うと元気になるはずなのに「合唱」がいまは難しい。そこで深川さんたちは自宅にいながら歌える童謡のカラオケCDをつくり、販売している。

 そういえばこの半年、腹から声を出していない。のどの筋肉も弱っている。歌おう。

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