日々小論

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 2008年の北京五輪で印象に残るアスリートがいる。オープンウオーター男子10キロに出場したオランダのマーテン・ファンデルバイデン選手だ。

 期待のスイマーとして活躍していた01年、急性リンパ性白血病を発症した。19歳のときのことである。闘病は2年に及び、抗がん剤や造血幹細胞移植などの治療に耐える日々を送った。

 ブランクを経て、復帰した当初はなかなか結果が出なかった。だが、やがて国際大会で上位に食い込むようになる。そして迎えた北京五輪。劇的なラストスパートでライバルを抜き去り、金メダルを手にした。

 大病を乗り越えた末の栄冠である。想像を絶する努力を重ねたに違いない。当時ニュースで見聞きし、そう思ったものだ。

 同じ病気で長期療養していた日本競泳界のスター池江璃花子選手が先月下旬、1年7カ月ぶりにレースに復帰した。社会がコロナ禍に苦しむ中、久々の明るいニュースに勇気づけられた人も多かったのではないか。筆者もその一人だ。

 ただ、一つだけ気になることがある。水の中で本格的に練習を再開してからわずか3カ月しかたっていない。「早すぎるのでは」との声も聞かれる中での実戦復帰だった。老婆心ながら同じ心配が浮かぶ。

 北京五輪後に引退し、現在は慈善活動などに取り組むファンデルバイデン氏は「病は自分に一歩ずつ着実に進むことを教えてくれた」と述べている。

 20歳の池江選手はレース後、「第二の水泳人生の始まり」と表現した。「国民の期待」という重さを感じているのなら、全て打ち払って今は自分のためだけに泳いでもらいたい。病気からの回復への道のりは始まったばかりなのだから。

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