日々小論

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 つい最近、何げなく聞いていたラジオで耳にした話。

 知り合いの視覚障害者が困っていたという。「何かお手伝いのできることはありますか」と声をかけてくれる人がずいぶん減ってしまったと。

 新型コロナウイルス禍で、密を避ける思いだろうか…と話は続いた。

 聞きながら、三代(みよ)達也さんのことを思い出す。18歳の時、バイク事故で首の骨を折り、車いす生活へ。自暴自棄にもなったが、リハビリ施設で出会った男性から「もっと挑戦したら」と言われ、前を向くようになった。そして単身での車いす世界一周に挑み、成し遂げる。

 その過程をつぶさに記録し、昨年出版した「一度死んだ僕の、車いす世界一周」に、とても印象深い場面がある。

 場所は米国ニューヨーク。交差点の段差に気づかず、車いすに乗ったまま前へ倒れ、投げ出された。指に軽いけがをした程度だったが、車いすは遠くへ。

 その時だった。1人の男性が後ろからひょいっと体を持ち上げてくれた。若い女性2人が車いすを戻してくれた。吹っ飛んでいたスマホは黒人のおじさんが拾って手渡してくれた。そして何事もなかったかのように、それぞれがそれぞれの行き先へ。この間、約15秒。

 車いす利用者が暮らしやすい街にする。そんなバリアフリーへの取り組みはもちろん大事だが、三代さんの実感はちょっと違う。世界共通のバリアフリー、それは人。

 「お手伝いのできることはありますか」「手伝いましょうか」が本当に減ってしまったのか、実情はよく知らない。でも、ピリピリしたご時世で、障害のある人がよりつらい立場にあるなら、やりきれない。

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