日々小論

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 先日、あるニュースの見出しに目がとまった。「核兵器禁止条約 発効まであと5カ国」。地中海の島国マルタが、核兵器の保有などを全面禁止する同条約を批准した。条約の効力が生じるには50カ国・地域の批准が必要で、マルタを含めると45になった-と伝えていた。

 記事を読んで、ブラジル在住の渡辺淳子さん(77)を思い浮かべた。2歳のとき、広島で黒い雨を浴び、大人になって被爆の事実を知った。以来、世界各国で被爆証言をし、条約の批准を訴えてきた被爆者だ。

 渡辺さんとは昨年春、神戸港で出会った。日本で初めて証言をするため、ピースボートの船旅「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」にブラジルから乗船。南米などで証言や交流を重ね、最後の寄港先が神戸だった。

 約50年前、結婚を機に神戸港からブラジルに渡ったという。懐かしそうに当時の記憶をたどってくれたが、条約反対の立場を貫く日本に対し「もどかしい」と憤った。寄港先では、海外の若者たちが「なぜ日本は条約に参加しないのか」と素朴な疑問を投げかけてくるという。

 「核兵器のない世界の実現に向けた国際社会の取り組みをリードする」

 「条約とゴールは共有しているが、アプローチが違う」

 いずれも8月9日、当時の安倍晋三首相の言葉だ。核兵器のない世界の実現は、唯一の戦争被爆国の使命としつつ、条約には参加しない考えを表明した。

 NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」は、年内の批准数50を目指す。菅義偉首相は素朴な疑問に対し、どんな道筋を示すのか。所信表明で語ってほしいが、国会が開く10月下旬まで待たなければ聞けない。もどかしい-。渡辺さんも同じだろう。

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