日々小論

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 豪打のプロ野球選手だった中西太さんは、指導者としてもたくさんの若手を育てた。口癖は「何苦楚(なにくそ)」だった。

 「苦しんで苦しんで土台をつくる。その石を足したら礎になるやろ」。そう言って笑い飛ばしたと、ずいぶん前の僚紙デイリースポーツで読んだ。

 大リーグに挑んだ岩村明憲さんは、教え子の一人だ。現地での入団会見で、こう話した。

 「no pain、no gain」

 痛みなくして、なにも得られない。何苦楚の英訳だという。

 コロナ禍のプロ野球も、残り試合が気になるところまで来た。振り返れば、育成から上がってきた選手がいつにも増して多いように思う。

 1軍、2軍のさらに下。3桁の背番号を着けた選手を育成と呼ぶ。華やかな世界ははるかかなたである。

 いつの試合だったか、ジャイアンツのテレビ中継でアナウンサーが言った。

 「今日のベンチには育成出身が5人もいますね」

 それを聞いて以来、各チームの育成出身者が気になった。先発メンバーに自分の名前があるのを見て「(名前の)打ち間違いかなと思った」と驚く若手がいた。打席に向かうときの登場曲に「男の勲章」を選んだ選手もいた。

 スターがきらびやかな光を浴びる。これがプロ。しかし、中西さんではないが、「何苦楚」「何苦楚」と上がっていくのもプロの味。路地裏から表道へ飛び出す若者がもっと見たい。

 かつて地方競馬から中央競馬へのし上がったハイセイコーは、国民的アイドルになった。

 あの勢い、あの輝き、あの存在感、あの物語。プロ球界にも、出てこい、ハイセイコー。

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