日々小論

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 福島県飯舘(いいたて)村といえば、東京電力福島第1原発の事故で全域に避難指示が出た地域だ。その渦中にいた村長、菅野(かんの)典雄さんが先日、任期満了で退任した。

 伝えるTVニュースを見ながら、かつて聞いた話がよみがえる。小規模な集まりでの講演だった。

 菅野さんは何度も

 「までい」

 と言った。

 「まで」は「真手」と書く。両手のことだという。地元の方言で、丁寧に、心をこめて、あるいは思いやりを意味する。「しつけはまでいにやれよ」というふうに。

 著書によれば、菅野さんは地産地消の村を目指した。キャッチフレーズに「スローライフ」を使いたかったが、どうも村民の反応が良くない。悩んでいたとき、一人の村民が言った。

 「そのスローライフって、までい、ってごどなんじゃねーべか」

 ハッとした。ぴったりの言葉が足元にあったのだ。そこから生まれた村の標語。

 「大いなる田舎 までいライフいいたて」

 村はその後、大震災、原発事故、全村避難、そして大部分の避難解除…と苦難の道が続く。でも村のホームページを見れば、「までい」というスローガンは健在だ。6期目を終え、地元紙の取材で菅野さんが語ったのも「飯舘の『までいライフ』が日本の20年、30年後の方向性になるのではないか」。

 失礼ながら、ニュースで見た顔のしわがグンと増えていた。穏やかな方だが、過酷な日々だったろうと、あらためて思う。

 でも、いろんなことを教わった。地域を元気にさせる宝物は足元にあること。それを見つける力が村おこし力ということ。

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